患者が選ぶ薬剤師、選ばれない薬剤師──その違いはどこにある?

薬剤師

薬剤師に「指名制」はありません。
それでも実際には、**「あの薬剤師さんに相談したい」という患者が生まれる一方で、「早く終わってくれれば誰でもいい」**と思われてしまう薬剤師もいます。

では、“選ばれる薬剤師”と“選ばれない薬剤師”の違いは何なのか?
本記事では、両者の行動・考え方・接し方の差を明確にしながら、
「指名されない職業」で“選ばれる存在”になるための視点と実践法を掘り下げていきます。


✅ 「薬剤師は選べない」構造のなかで差がつく理由

患者は基本的に、薬剤師を「指名」することができません。
それでも「この人に相談したい」と感じさせるのは、接点の中で得られる印象・信頼・体験が違うからです。

なぜ差がつくのか?

要因内容
接客時間が短いわずか数分で印象が決まる
顔・名札の印象名前を覚えられた薬剤師は信頼されやすい
不安に気づく姿勢情報ではなく「気づき」が信頼の種になる
自信と共感のバランス押しつけでも不安感でもない“ちょうどよさ”

つまり、同じ内容を伝えていても「伝わり方」と「印象の残り方」が違うのです。


📉 選ばれない薬剤師にありがちなNG行動

① マニュアル的な説明を早口で一方的に話す

→ 「録音された音声を聞いているようだった」と思われてしまう


② アイコンタクトや表情がない

→ 視線を合わさず説明されると、“本当にこちらを見ているのか”と不信感を持たれる


③ 患者の話をさえぎってしまう

→ 「質問しにくい空気」を生む原因に。最も印象が悪くなる要素のひとつ


④ 不安をスルーする

→ 「この薬、副作用が怖いんです」と言われた時に「大丈夫ですよ」とだけ返すと、不安が置き去りにされる


🧠 患者が“選ぶ”薬剤師の共通点とは?

選ばれる薬剤師に共通しているのは、スキルより“姿勢”の違いです。


① 「答える人」ではなく「聴く人」

  • 質問に即答するのではなく、「まず背景を聞く」姿勢がある
  • 「なぜそう思ったのか」まで掘り下げようとする

② 説明ではなく“納得”をつくる

  • 「この薬はこう飲んでください」ではなく、
    →「このタイミングで飲むと、生活の中でも忘れにくくなりますよ」
    “患者の行動設計”を一緒に考える

③ 名前を名乗り、相手の名前も覚える

  • 「○○さんですね。私は〇〇薬剤師です」
    → このやりとりがあるだけで信頼構築の第一歩になる

④ 不安や違和感に丁寧に向き合う

  • 「副作用が出そうで不安」という言葉に
    →「どういう副作用を一番心配されていますか?」と掘り下げる
    不安の中身を“整理”することで安心感が生まれる

💬 実際に「選ばれる薬剤師」の体現行動例

シーン選ばれる薬剤師の対応
初回服薬説明「他に不安な点はありますか?」と、終了後に質問機会をつくる
再来局時「前回の薬、お変わりありませんでしたか?」と記憶をベースに接する
飲み方の工夫相談「この薬、食後が難しいときはいつ飲んでいらっしゃいますか?」と患者の生活に合わせる
高齢者対応ゆっくり・大きめの声・図解の活用など非言語サポートも併用する

📈 “顔が見える薬剤師”はリピート率と満足度が高い

調査では、薬剤師の名前を覚えている患者ほど、薬局に対しての信頼度・再来率が高いことが明らかになっています。

  • 名前を覚えてもらっている薬剤師の対応に「とても満足」と答えた人は全体の70%以上
  • 「前回と同じ薬剤師に相談したい」と希望する声は高齢者層で特に多い

🏥 “指名されない職種”で選ばれるための戦略

1. 自分を「見える存在」にする

  • 名札、挨拶、軽い自己紹介などで存在感を可視化

2. “次回につなぐ関係”を意識する

  • 「次の検査の結果を教えてくださいね」など、継続性のある会話設計

3. 相手の“価値観”にアプローチする

  • 「この薬が苦手」→「味?形?過去の経験?」と掘り下げて共感を示す

✅ 結論:「薬の説明」ではなく「人の支援」ができる薬剤師が選ばれる

選ばれる薬剤師に必要なのは、

  • スキルの高さよりも相手に合わせる柔軟さ
  • 知識の多さよりも伝え方と寄り添い方

患者は、“薬”ではなく“自分”を見てくれる人を信頼します。

薬剤師が“見られる側”から“見ようとする側”へ転じたとき、
その瞬間から、「誰でもいい」ではなく「あなたに聞きたい」と思われる存在へと変わるのです。