空室リスクより怖いのは管理コスト?投資判断に必要な数字の話

不動産投資

「不動産投資で一番のリスクは空室だ」とよく言われます。しかし実際には、毎月確実に発生する“管理コスト”こそ、じわじわと投資家の収益を蝕む見えにくいリスクなのです。

この記事では、「空室率」だけにとらわれず、管理費や修繕費、税金などの“見えにくいコスト”がどれほどインパクトを持つかをわかりやすく解説。さらに、投資判断に必要な数字を整理し、「本当に収益が出る物件」の見抜き方を紹介します。


✅ 空室リスク=“発生するかもしれない”リスク

不動産投資初心者が最も気にするのが「空室リスク」です。確かに、入居者がいなければ家賃収入がゼロになるため、非常にインパクトがあります。

ただし、空室は一時的な損失であり、入居が決まれば収入は復活します。地域や間取りによっては、多少の空室は「想定内」として織り込むことが可能です。

たとえば、以下のような「シミュレーション」があれば備えられます:

  • 年間入居率:90%
  • 家賃6万円 → 年間家賃収入:6万円 × 12ヶ月 × 0.9 = 64.8万円

「空室リスク」は、適切な利回り設定と運営戦略である程度コントロールできるのです。


🧾 管理コスト=“確実に発生する”リスク

一方で、管理費・修繕積立金・固定資産税・仲介手数料などは、**空室であっても、必ず毎月かかる“固定支出”**です。

代表的な管理コスト一覧(年間ベース)

項目目安(年額)補足
管理委託費家賃収入の5〜10%サブリースの場合は20%前後にも
修繕積立金年間6〜12万円(区分)マンションの場合必須
固定資産税・都市計画税年間5〜20万円立地・築年数によって変動
共用電気代・清掃費年間3〜5万円(アパート)自主管理だと節約可能

例えば、家賃収入が年間72万円(6万円×12ヶ月)の場合、上記コストが仮に年間30万円発生すると…

収益率は実質5.8% → 1.6%へ激減!

しかもこれ、満室でこの数字です。


📉 管理コストは“サイレントキラー”

管理コストの怖いところは、投資判断時に見落とされやすいこと。表面利回りや空室率ばかりに目が行くと、**手残り(実質利回り)**が激減する現実に気づきません。

例:表面利回り8%、管理コストで逆転

項目A物件B物件
家賃収入72万円72万円
管理費10%(7.2万)20%(14.4万)
修繕費6万円12万円
その他固定費7万円7万円
手残り利益51.8万円38.6万円
実質利回り7.2%5.1%

見かけの利回りが高くても、手元に残るお金は少ない。この“ズレ”が管理コストの怖さです。


📊 投資判断に必要な「本当の数字」リスト

投資物件を選ぶ際、チェックすべき数字は「表面利回り」ではなく、次のような**“手残りベース”の数字**です:

✔ 実質利回り(Net Yield)

(年間家賃収入 - 年間コスト) ÷ 物件価格
👉 6%以上が理想。5%未満は慎重に。

✔ 空室耐性

管理コスト ÷ 月家賃 = 何ヶ月空室で赤字か?
👉 2ヶ月で赤字なら、かなりリスクが高い。

✔ 修繕・管理費の過去実績

👉 マンションの場合、管理組合の会計報告を確認
築古ほど修繕費がかさみ、利回りを圧迫。

✔ 初期投資回収期間(投下資本÷年間手残り)

👉 15年以内なら優秀。20年超えるとリスク高。


🔍「格安物件」は要注意!

利回り20%以上をうたう格安物件もありますが、以下のような問題を抱えていることが多いです:

  • 築古・設備が古く修繕費が読めない
  • 空室期間が長くなる立地
  • 管理が杜撰で入居者トラブル多発
  • 管理会社が高額な費用を請求する構造

つまり、高利回り=高リスクの可能性が高く、「実際には管理コストで手残りゼロ」というケースも。


🧠 独自の視点:管理コストは“見えないパートナー”

不動産投資は「物件」との契約だけでなく、「管理会社」との付き合いでもあります。信頼できる管理会社を選ぶことで、将来的なトラブル回避と安定収入の両立が可能になります。

例えるなら、不動産投資は「物件が車」で「管理会社が運転手」です。いくら高性能な車でも、運転が下手なら事故は避けられません。


✅ まとめ:空室より管理コストのほうが怖い理由

  • 空室は一時的な収入減だが、管理コストは確実な支出
  • 表面利回りに惑わされず、実質利回りと手残り金額で判断
  • 管理会社・修繕履歴・空室耐性をチェックすることでリスク回避可能

不動産投資において「空室リスク=損失」と思いがちですが、**本当に投資成績を左右するのは“固定費=管理コスト”**です。見落としがちな数字にこそ、成功と失敗の分かれ目があります。