【完全版】歴代アカデミー作品賞 全作まとめ|サイレントから現代映画まで全ノミネート一覧

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映画界で最も権威のある賞――それがアカデミー賞(Academy Awards)。 その中でも中心となるのが、毎年「その年の最も優れた映画」を選ぶ作品賞(Best Picture)です。

1927年の第1回から現在に至るまで、作品賞は映画史の変化を映す“鏡”のような存在でした。 サイレントからトーキーへ、ハリウッド黄金期、大恐慌、戦争、冷戦、アメリカンニューシネマ、 デジタル革命、ストリーミング時代の到来――。 それぞれの時代の価値観や文化は、作品賞のラインナップに鮮やかに刻まれています。

作品賞は単なるランキングではなく、その年の世界が何を求め、何を語ろうとしたのかを理解する指標でもあります。 時代背景と映画の流れを追いながら、名作の旅へぜひ浸ってみてください🎬🌍

ノマドランド
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コーダ あいのうた
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
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オッペンハイマー
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ANORA アノーラ
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2020年代 ― 映画の地殻変動を示した5年間🎬🔥

2020年代のアカデミー作品賞は、配信と劇場公開の境目があいまいになり、インディー系から大作、国際色豊かな作品まで幅広く評価されたのが特徴です。
パンデミック期の旅と喪失を描いた『ノマドランド』から始まり、聴覚障害のある家族の物語『コーダ あいのうた』、マルチバースを駆け抜けるカオスなアクション『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、歴史巨編『オッペンハイマー』、そしてロウ・バジェットながらNYの空気を生々しく切り取った『ANORA アノーラ』へと続き、
「どんな規模・ジャンルの映画でも、心を動かせば作品賞を狙える」という時代の変化がはっきりと表れた5年間になりました。

2010年代 ― 多様化と配信時代の夜明け🎥✨

2010年代のアカデミー作品賞は、社会派ドラマと新しい映画表現が交互に頂点に立った10年でした。
王室ドラマ『英国王のスピーチ』、サイレント映画へのオマージュ『アーティスト』、政治サスペンス『アルゴ』、奴隷制の歴史を描く『それでも夜は明ける』、ワンカット風ブラックコメディ『バードマン』、教会スキャンダルを追う『スポットライト』、構成の“取り違え”騒動も話題になった『ムーンライト』、異形と女性の愛を描く『シェイプ・オブ・ウォーター』、人種とロードムービーを融合した『グリーンブック』、そして韓国映画として初の作品賞『パラサイト 半地下の家族』へと続き、
ハリウッドの中心に「多様性」と「作家性」が本格的に入り込んだ転換期となりました。

2000年代 ― 歴史大作と社会派ドラマがせめぎ合い🎞️🔥

2000年代のアカデミー作品賞は、壮大な歴史大作骨太な社会派ドラマが入れ替わりで頂点に立った時代でした。
剣闘士の復讐劇『グラディエーター』、数学者の半生を描いた『ビューティフル・マインド』、ミュージカル映画復権の『シカゴ』、ファンタジー大河を完結させた『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』
ボクシング映画の傑作『ミリオンダラー・ベイビー』、人種問題に切り込んだ『クラッシュ』、犯罪サスペンス『ディパーテッド』、西部モダンノワール『ノーカントリー』
貧民街から成り上がる物語『スラムドッグ$ミリオネア』、そしてイラク戦争を背景にした『ハート・ロッカー』まで、
エンタメ性と社会性が高いレベルで両立した作品が数多く生まれた10年と言えます。

2008年(第81回) インドのスラム街から世界へ広がるサクセスストーリー
2007年(第80回) 冷徹な犯罪劇が作品賞を制覇
2006年(第79回) 犯罪サスペンスと国際派ドラマが競い合った年
2005年(第78回) 人種差別と葛藤を描いた群像劇が作品賞に
2004年(第77回) 老ボクサーと女性の絆を描いた感動作が受賞
2000年(第73回) 剣闘士の復讐劇が新世紀最初の作品賞に

1990年代 ― サスペンス全盛と新世代ドラマが躍動🎬🌈

1990年代のアカデミー作品賞は、社会派サスペンスヒューマンドラマが強い存在感を放った10年でした。
ネイティブ・アメリカンと開拓時代を描いた『ダンス・ウィズ・ウルブズ』に始まり、連続殺人鬼と捜査官の心理戦『羊たちの沈黙』、西部劇を再定義した『許されざる者』
ホロコーストを重厚に描いた『シンドラーのリスト』、アメリカ現代史を“走り抜ける”『フォレスト・ガンプ/一期一会』、スコットランド独立を描く『ブレイブハート』
砂漠を舞台にした恋愛ドラマ『イングリッシュ・ペイシェント』、史上空前の海難劇『タイタニック』、エリザベス朝劇作家の恋愛劇『恋におちたシェイクスピア』
そして郊外の崩壊する家族を描く『アメリカン・ビューティー』へと続き、
「エンタメ性」と「人間の闇や葛藤」を両立させた作品が続々と生まれた時代でした。

1999年(第72回) 郊外の家庭と内面の崩壊を描いたブラックコメディが受賞
1996年(第69回) 砂漠を舞台にした恋愛ドラマが作品賞に
1995年(第68回) スコットランド独立を描く歴史アクションが受賞
1994年(第67回) アメリカ現代史を駆け抜ける男の半生が大ヒット
1993年(第66回) ホロコーストを描く歴史大作が世界を震撼させた年
1991年(第64回) サイコスリラーが主要部門を総なめにした年
1990年(第63回) ネイティブ・アメリカンを描いた西部劇が旋風を巻き起こす

1980年代 ― ベトナム後遺症と家族ドラマ🎞️🌅

1980年代のアカデミー作品賞は、戦争の記憶・社会問題・家族のドラマが強く意識された10年でした。
ベトナム帰還兵のトラウマと再生を描いた『ディア・ハンター』から続く流れの中で、『プラトーン』『普通の人々』のように心の傷と向き合う作品、
インド独立の歴史を壮大に描いた『ガンジー』、東欧やカンボジアの悲劇に迫る『アマデウス』『キリング・フィールド』
ケニアの大地を舞台にした恋と喪失『愛と哀しみの果て』、そして自閉症の兄との旅『レインマン』、人種差別を扱うロードムービー『ドライビング Miss デイジー』など、
「個人の感情」と「歴史・社会」を結びつける作品が多く作品賞レースを賑わせました。

1988年(第61回) 天才的な兄と弟のロードムービーが観客の心をつかむ
1987年(第60回) 清朝末期の皇帝を描く歴史大作が受賞
1986年(第59回) ベトナム戦争の最前線を若い兵士の目から描写
1985年(第58回) アフリカの大地に生きる恋と喪失の物語が受賞
1984年(第57回) モーツァルトの才能と嫉妬を描いた傑作が受賞
1983年(第56回) 友情と家族の再生を描くドラマが作品賞に
1982年(第55回) インド独立の父を描いた伝記大作が高評価
1981年(第54回) 信仰とスポーツに生きる青年たちの物語が受賞
1980年(第53回) “普通の人々”の家族崩壊と再生が観客の共感を呼ぶ

1970年代 ― ニューシネマと反体制映画が躍動🎬⚡

1970年代のアカデミー作品賞は、ベトナム戦争や政治不信の空気を背景にしたニューシネマ全盛期でした。
第二次世界大戦の将軍像を描く『パットン大戦車軍団』、暴力と警察組織の腐敗を描いた『フレンチ・コネクション』、マフィア一族の興亡を描く『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザー PART II』
詐欺コンビを軽妙に描いた『スティング』、精神病院を舞台に権力と抵抗を描いた『カッコーの巣の上で』、市井のボクサーのサクセスストーリー『ロッキー』
神経症的な恋愛を描いたコメディ『アニー・ホール』、ベトナム戦争の帰還兵を描いた『ディア・ハンター』、離婚と親権争いを描く『クレイマー、クレイマー』など、
個人と国家・社会の緊張関係を映し出す作品が、強烈なキャラクターと共にスクリーンを彩った10年でした。

1979年(第52回) 離婚と親権をめぐる家族ドラマが社会現象に
1978年(第51回) ベトナム戦争の傷跡を描いた重厚ドラマが受賞
1977年(第50回) SF超大作と恋愛コメディが同じ年にノミネート
1976年(第49回) 市井のボクサーのサクセスストーリーが世界を熱くする
1975年(第48回) 精神病院を舞台にした反体制ドラマが作品賞に
1973年(第46回) コンゲーム映画の金字塔が作品賞を獲得
1972年(第45回) マフィア映画の金字塔が堂々の作品賞に輝く
1971年(第44回) 刑事アクションと音楽劇が揃ったバラエティ豊かな年
1970年(第43回) 将軍の栄光と狂気を描く戦争映画が新時代の幕開けに

1960年代 ― スケール拡大と新ハリウッド前夜の傑作揃い🎬🌈

1960年代のアカデミー作品賞は、超大作時代の終盤新ハリウッドの萌芽が入り混じった時代でした。
アラビア砂漠の叙事詩『アラビアのロレンス』、アイルランド移民の苦闘を描く『わが命つきるとも』
ベトナム前夜の社会変化を反映した人間ドラマ『夜の大捜査線』、若者文化の象徴とも言える『卒業』
そしてミュージカル黄金期を象徴する『サウンド・オブ・ミュージック』など、 “古き良きハリウッド”と“新時代への移行”をつなぐ重要な10年でした。

1969年(第42回) アメリカンニューシネマの象徴作が受賞
1967年(第40回) 公民権運動の時代背景を映した社会派作品が受賞
1966年(第39回) 宗教・戦争・家庭のドラマが並んだ重厚な年
1965年(第38回) ミュージカル史上に残る金字塔が堂々受賞
1964年(第37回) 旧ハリウッドとブラックユーモアが同居した年
1963年(第36回) 古代史・移民・ミュージカルが並んだ豪華な顔ぶれ
1962年(第35回) 砂漠の叙事詩が圧倒的スケールで作品賞を制覇
1961年(第34回) ミュージカル映画が再び世界を席巻した年
1960年(第33回) 人間の哀しみと喜びを描いた名作が受賞した年

1950年代 ― シネマスコープとメロドラマ黄金期📽️🌟

1950年代のアカデミー作品賞は、ハリウッド黄金期の円熟大作主義の加速がくっきりと表れた10年でした。
舞台裏の野心と嫉妬を描いた『イヴの総て』、ダンスと音楽に彩られた『巴里のアメリカ人』、サーカス大作『地上最大のショウ』
戦時ロマンス『地上より永遠に』、港湾労働者の闘い『波止場』、テレビ時代の庶民ドラマ『マーティ』
世界一周アドベンチャー『八十日間世界一周』、戦争捕虜キャンプを描いた『戦場にかける橋』、 そして旧約聖書とローマ帝国を舞台にした超大作『ベン・ハー』など、 「映画館でこそ映える」スペクタクルと人間ドラマが豊かに並んだ年代です。

1959年(第32回) 超大作スペクタクルの頂点に達した歴史ローマ劇
1958年(第31回) 恋と成長、家庭のドラマが前面に出た年
1957年(第30回) 戦争捕虜キャンプを舞台にした心理ドラマが受賞
1956年(第29回) 世界一周旅行と歴史スペクタクルが火花を散らす
1955年(第28回) 庶民のささやかな恋と人生を描く小品が作品賞に
1954年(第27回) 港湾を舞台にした社会派ドラマが強烈な印象を残す
1953年(第26回) 戦時下ロマンスと西部劇が並び立つ華やかな年
1952年(第25回) サーカス大作と西部劇、ロマンスが入り乱れる年
1951年(第24回) 華やかなミュージカルと社会派ドラマが拮抗した年
1950年(第23回) ショービジネスの裏側を描く辛口ドラマが受賞

1940年代 ― ハリウッド黄金期と戦争の時代に🎬🌎

1940年代は、ハリウッド黄金期の真っ只中。 第二次世界大戦の影響も大きく、戦意高揚映画から社会派ドラマ、 そして現在も語り継がれる恋愛映画まで、多彩な名作が作品賞を獲得しました。

名匠ヒッチコックが輝いた『レベッカ』、 反戦文学の名作を基にした『ミニヴァー夫人』、 不朽の名作『カサブランカ』、 コメディとヒューマンドラマを融合した『我が道を往く』、 戦後社会の不安と希望を描いた『我等の生涯の最良の年』、 そしてシェイクスピアを荘厳に映像化した『ヘンリィ五世』など、 映画史の教科書に必ず登場する作品が揃った時代です。

1949年(第22回) 政治と権力の腐敗を暴いた社会派ドラマが受賞
1948年(第21回) シェイクスピア悲劇が荘厳な映像美で作品賞に
1947年(第20回) 反ユダヤ主義を扱った社会派ドラマが高評価
1946年(第19回) 戦後社会の悲喜こもごもを描く群像劇が受賞
1945年(第18回) アルコール依存と再生を描いた衝撃作が受賞
1944年(第17回) 修道院と歌声をめぐる感動ドラマが受賞
1943年(第16回) いまなお語り継がれる恋愛映画の金字塔が受賞

1930年代 ― トーキー黎明期と大恐慌の時代に生まれたクラシック映画たち🎞️✨

1930年代は、サイレントからトーキー映画への完全移行が進み、 同時に世界恐慌や戦争前夜の不安を背景にしながらも、ミュージカル、メロドラマ、歴史劇など 多彩なジャンルの名作がアカデミー作品賞に名を連ねた10年です。

反戦映画の古典『西部戦線異状なし』、西部開拓を描いた『シマロン』、 豪華ホテルを舞台にした群像劇『グランド・ホテル』、 大帝国の興亡を描いた『カヴァルケード』、 ロマンティック・コメディの金字塔『或る夜の出来事』、 反乱を描く海洋スペクタクル『戦艦バウンティ号の叛乱』、 そしてミュージカルや社会派ドラマが入り混じる中、 年末を飾る超大作『風と共に去りぬ』が1930年代の締めくくりとして君臨しました。

1939年(第12回) “史上最高の映画年”と呼ばれる豪華ラインナップ
1930/31年(第4回) 西部開拓史を描いた大河ドラマが受賞
1929/30年(第3回) 反戦映画の古典が作品賞を受賞した初期トーキー期

1920年代 ― アカデミー賞誕生期とサイレントからトーキーへの橋渡し🎞️🏆

1920年代は、アカデミー賞そのものが誕生し、まだサイレント映画が主流だった時代。 第1回は第一次世界大戦の空戦を描くスペクタクル『つばさ』が、 第2回はトーキー初期のミュージカル『ブロードウェイ・メロディー』が作品賞に選ばれました。

犯罪ドラマ『暴力団』やロマンス『第七天国』、 西部劇『懐しのアリゾナ』、レビュー映画『ハリウッド・レヴィユー』など、 “映画がまだ若かった時代”の多彩なラインナップが特徴的です。

1928/29年(第2回) トーキー黎明期のミュージカルが初の作品賞を獲得
1927/28年(第1回) アカデミー賞の幕開けを飾ったサイレント時代の名作たち