国際協力は「遠い世界の話」だと思っていませんか?
実は、JICAの活動や青年海外協力隊の経験は、私たちの暮らしや未来に直結しています。理念だけでなく、現場での挑戦や人間ドラマを知ることで、国際協力がぐっと身近に感じられるはずです。この記事では、JICAの全体像から現場体験、SDGsやソーシャルイノベーションまで、国際協力を多角的に学べる6冊を厳選して紹介します。入門者から専門家まで幅広く役立つ本ばかりなので、次の一冊選びにぜひ役立ててください。
JICA活動の全体像を掴む入門書
『国際協力ってなんだ?:つながりを創るJICA職員の仕事』

出版年:2025年2月
著者:大河原誠也(おおかわら せいや)
著者の経歴:東京大学教養学部卒業後、2009年にJICAに入構。アフガニスタン、モルディブ、モザンビークといった現場に長期駐在し、教育協力や人材育成プロジェクトに携わってきた実務家。現在も国際協力の第一線で活動を続ける人物であり、政策立案から現場運営まで幅広い経験を持つ。
本の概要
本書は、国際協力を「難しい専門用語」ではなく、JICA職員の実際の仕事やエピソードを軸に解説した入門書です。教育やインフラ整備、貧困削減、ジェンダーといった幅広い分野で、JICAがどのように関わり、現地の人々と協働しているのかが具体例とともに示されます。著者は自身の駐在経験をもとに、「なぜ日本が国際協力を行うのか」「現地の課題はどのように発見され、解決に向けて動くのか」をわかりやすく伝えています。
この本の特徴は、机上の理論ではなく「現場のリアルな判断や苦労」を背景に、国際協力がどのように進められているかを描き出している点です。たとえば、単に「学校を建てる」ではなく、その後に持続的に使われるための仕組みづくりや、現地政府との信頼関係の重要性が強調されています。
主な口コミ・評判
読者のレビューでは以下のような声が目立ちます。
- わかりやすい入門書:「国際協力に興味はあったけれど、どこから学べばいいかわからなかった。専門知識がなくても理解できる」
- 現場感がリアル:「机上の空論ではなく、著者自身の体験談を交えて書かれているので、説得力がある」
- 学生や就活生におすすめ:「国際協力やJICAでのキャリアに関心がある人にとって、仕事の具体像が見える良書」
- 専門家からの評価:「理論的解説だけでなく、現場での実務を踏まえた体系的な整理がされていて、専門的な理解にも役立つ」
なぜおすすめか
国際協力に関する書籍は数多くありますが、本書は 「入門的でありながら、実務の深さも学べる」 という点で際立っています。JICAの理念や政策的な枠組みを抽象的に語るのではなく、現場職員の視点から「なぜこの仕事が社会にとって必要なのか」を具体的に理解できるのは大きな魅力です。
特に、これから国際協力に携わりたい学生や若手社会人にとっては、自身のキャリアを考える上での指針にもなり得るでしょう。また、国際関係や開発学を専門的に研究する人にとっても、政策と実務をつなぐ現場感覚を補う貴重な資料となります。
👉 この書籍を入口にすると、「JICAとは何か?」を理論と現場の両面から理解できるため、シリーズ全体を読み進める前の最初の1冊として強く推奨できます。
現場体験から学ぶ協力のリアル
『当たって、砕けるな! 青年海外協力隊の流儀』

出版年:2010年
著者:吉岡逸夫
著者の経歴:国際協力ジャーナリスト。アジア・アフリカ諸国を中心に取材活動を続け、国際協力や人道支援の現場を精力的に発信している。協力隊OBへのインタビューや現地取材に基づく著作を多く執筆。
本の概要
本書は、青年海外協力隊員13人が経験したリアルな挑戦を描いたノンフィクションです。農村での生活改善、教育の現場、保健医療支援など、多様な活動を通じて「成功」だけでなく「失敗」や「葛藤」にも焦点を当てています。国際協力の現場が、単なる「善意の物語」ではなく、試行錯誤と粘り強さに支えられていることが浮き彫りになります。
主な口コミ・評判
- リアリティがある:「成功談ではなく、むしろ失敗をどう乗り越えたかが描かれていて現実的」
- 協力隊志望者の必読書:「これを読んで派遣前の覚悟ができた。現場は厳しいが意味があると理解できる」
- 読み物としても面白い:「エッセイ的な軽快さと、現場の重みがバランス良く共存している」
おすすめする理由
国際協力を学ぶうえで重要なのは「現場のリアルな温度感」を理解することです。この本は、理念や制度ではなく、人間同士のぶつかり合いや、文化的な壁に直面したときの生々しい体験を描き出しており、「国際協力はきれいごとではない」という視点を与えてくれる点で貴重です。学生や若手実務家にとっては、自身が現場に立ったときの心構えを養う実践的な一冊となります。
『ソロモン諸島でビブリオバトル ~ぼくが届けた本との出会い~』

出版年:2020年
著者:益井博史
著者の経歴:元青年海外協力隊員。ソロモン諸島に派遣され、教育・文化活動に従事。帰国後も教育や国際理解に関する活動を続け、講演や著作を通して協力隊体験を社会に伝えている。
本の概要
本書は、図書館や本屋のないソロモン諸島で、著者が子どもたちに「本を楽しむ文化」を広めるために奮闘した記録です。手に入る本は限られていましたが、著者は「ビブリオバトル」という仕組みを活用して、本を媒介に人と人がつながる場を作り出しました。現地の文化や価値観に寄り添いながら試行錯誤する過程が、ユーモラスかつ感動的に描かれています。
主な口コミ・評判
- 教育協力の新しい視点:「物資が乏しくても知識を共有する方法があると教えてくれる」
- 心温まる物語:「現地の子どもたちの笑顔や反応が描かれていて胸を打たれる」
- 一般読者にも読みやすい:「国際協力に詳しくない人でも、教育と文化の大切さがすっと入ってくる」
おすすめする理由
この本は、協力隊の活動を「教育文化」というやや抽象的な領域から具体的に描き出す稀有な事例です。現地での困難を創意工夫で乗り越えたプロセスは、**「国際協力は物資の提供だけではなく、人々の心や文化に寄り添うこと」**を教えてくれます。教育や文化交流の分野に関心のある読者に特におすすめです。
👉 この2冊を組み合わせることで、国際協力の現場を 「失敗と学び」「創意工夫と文化交流」 という異なる角度から理解できる構成になります。
SDGsや社会課題とJICAの関係を探る視点
『JICA × SDGs: 国際協力で「サステナブルな世界」へ』

出版年:2023年7月(山川出版社)
編著:国際協力機構(JICA)
著者の背景:本書はJICA本部のSDGs室および各分野の専門家によって執筆。国際協力の現場で長年活動してきた実務者が執筆陣に加わり、理論だけでなく実践を踏まえた内容になっています。
本の概要
本書は、SDGs(持続可能な開発目標)とJICAの活動のつながりを、具体的なプロジェクト事例とともに整理した解説書です。教育・保健医療・インフラ・気候変動対策・ジェンダー平等など、多様な分野の取り組みがSDGsの17目標にどのように直結しているのかを体系的に紹介しています。
特に特徴的なのは、単なる成功事例の列挙ではなく、**「課題は何だったのか」「どのように解決に至ったのか」「今後の持続性はどう担保されるのか」**といった分析を丁寧に加えている点です。これにより、国際協力の実務とSDGsの理念がどのように結びついているのかを、深く理解することができます。
主な口コミ・評判
- SDGs学習に最適:「授業や研究でSDGsを扱う際に、とてもわかりやすい事例集になっている」
- 専門家視点でも満足:「単なる入門書ではなく、開発協力の実務に即した分析が含まれている」
- JICAの活動が具体的に見える:「抽象的な目標だったSDGsが、実際にどうプロジェクトと結びついているのかが理解できた」
- ポジティブな印象:「堅い内容をイラストや図表で整理していて、読みやすく工夫されている」
おすすめする理由
SDGsは国際社会共通の目標として広く認知されていますが、具体的に「どう現場で実現されているか」を知る機会は少ないのが実情です。本書はそのギャップを埋め、SDGsを“スローガン”ではなく“実践”として理解できる貴重な資料です。
特に、これから国際協力や国際開発を学ぶ学生、あるいは企業でCSRやSDGs関連事業に携わる人々にとって、JICAが蓄積してきた知見と実務のプロセスを俯瞰できる点で非常に有益です。
👉 この本を通じて読者は、SDGsが単なる理想論ではなく、JICAの協力プロジェクトを通じて「持続可能な未来」にどうつながるのかを具体的に学ぶことができます。
日本型協力とソーシャルイノベーション
『日本型開発協力とソーシャルイノベーション:知識創造が世界を変える』

出版年:2024/4/11
編著:野中郁次郎・JICA研究所編
著者の経歴:
- 野中郁次郎:一橋大学名誉教授。知識経営(Knowledge Management)研究の世界的権威。SECIモデルなど組織的知識創造論の提唱者として知られ、国際的に高い評価を受ける経営学者。
- JICA研究所(現:JICA緒方貞子平和開発研究所):国際協力に関する理論と実践を結びつける研究機関。政策提言やプロジェクトの分析を通じて、開発協力の新たなアプローチを提示している。
本の概要
本書は、国際協力の現場における「日本型開発協力」と呼ばれるアプローチを、ソーシャルイノベーションの視点から描いた専門的な書籍です。教育改革、農業支援、地域保健、インフラ整備など7つの事例を取り上げ、それぞれでどのように知識が共有され、新しい価値が創造されたかを分析しています。
最大の特徴は、「知識創造論」をフレームワークとして国際協力を解説している点です。JICAが関与した現場では、単なる援助の提供ではなく、現地の人々が主体的に学び、試行錯誤を通じてイノベーションを生み出す過程が重視されます。この本は、そのプロセスを理論的に整理しつつ、実務に直結する事例として提示しています。
主な口コミ・評判
- 専門家からの評価:「知識経営の理論を開発協力に応用したユニークな研究書であり、国際協力研究に新しい視座を与えている」
- 実務家からの評価:「現場で働くJICA関係者やNGOにとって、自分たちの活動を理論的に再解釈できる内容」
- 学術的価値:「単なる事例紹介ではなく、SECIモデルや知識創造論を軸に論理的に整理されている」
- 読みやすさ:「専門的ではあるが、事例が豊富で現場感も伝わり、研究者だけでなく実務家も楽しめる」
おすすめする理由
国際協力を理解する際、しばしば「援助の金額」や「プロジェクトの数」が注目されます。しかし、本書はその一歩先を行き、**「知識がどのように共有され、人々の間で新しい解決策が生まれるのか」**という視点を提示します。
これは特に、以下の読者に強くおすすめできます:
- 国際協力を「実務+理論」の両面から深く理解したい人
- SDGsや社会イノベーションに関心があり、現場での学びを体系化したい人
- NGOやJICAなどの実務者で、自らの活動を理論的に振り返りたい人
本書を読むことで、国際協力を「資金や技術の移転」にとどめず、人と人との知識創造の営みとして捉えることができるようになります。
個人の声から見る国際協力の意味
『異文化に身を置くすべての人へ』

出版年:2024年
編著:太田 旭
著者の背景:
このネットワークは、青年海外協力隊をはじめJICAのプロジェクトで派遣された管理栄養士・栄養士によって構成されています。アジア・アフリカ・中南米などで栄養改善や食育活動に取り組み、その経験を共有し、栄養分野における国際協力を推進してきました。
本の概要
本書は、栄養士や保健分野の専門家として国際協力に携わった人々の声をまとめたエッセイ集です。発展途上国の農村や都市部で直面した食生活の課題、現地の人々との文化的交流、栄養改善に向けた試行錯誤などが描かれています。
特に強調されているのは、「異文化において“正しい”と思うことが必ずしも通用しない」という現実です。たとえば、現地の伝統食や食文化を尊重しながら、持続可能な形で健康改善につなげていく工夫が必要であることが、具体的な事例を通して示されています。
主な口コミ・評判
- 実務者の声:「栄養士として活動する際のリアルな苦労と発見が描かれており、現場に立つ前の準備に役立つ」
- 読者からの共感:「文化の違いに戸惑う場面もユーモラスに描かれていて、国際協力を身近に感じられる」
- 教育的価値:「栄養分野に限らず、異文化体験をする人すべてに通じる学びがある」
- ポジティブな感想:「理想と現実のギャップをどう乗り越えたかが伝わり、勇気をもらえる」
おすすめする理由
この本は「専門家としての視点」と「個人としての体験」が融合した、国際協力書籍の中でもユニークな位置づけを持ちます。栄養改善という専門分野に焦点を当てつつも、実際には 「異文化でどう生き、どう働くか」 という普遍的なテーマに迫っています。
おすすめのポイントは次の通りです:
- 専門性と人間味の両立:栄養士の専門知識を背景にしながらも、活動のリアルな人間ドラマを感じられる
- 汎用性のある学び:栄養士や医療従事者に限らず、海外留学や異文化交流を経験する人にとっても示唆的
- 国際協力の“等身大の姿”:大規模プロジェクトでは見落とされがちな、一人ひとりの実践の積み重ねを伝えている
このように本書は、国際協力を「個人の声」から理解できる貴重な資料であり、専門家志望者にも一般読者にも薦められる一冊です。
JICA関連おすすめ書籍一覧
書籍タイトル | 出版年 | 著者 / 編著 | 主な内容・特徴 |
---|---|---|---|
国際協力ってなんだ?:つながりを創るJICA職員の仕事 | 2025年 | 大河原誠也(JICA職員) | JICA職員の実務と理念を紹介する入門書。現場の具体例から国際協力の全体像を理解できる。 |
当たって、砕けるな! 青年海外協力隊の流儀 | 2011年 | 吉岡逸夫 | 青年海外協力隊員13人の挑戦や失敗を描くノンフィクション。現場のリアルを体感できる。 |
ソロモン諸島でビブリオバトル ~ぼくが届けた本との出会い~ | 2016年 | 益井博史(元協力隊員) | 本を媒介に教育と文化交流を行った奮闘記。現地での創意工夫と文化的アプローチを学べる。 |
JICA × SDGs: 国際協力で「サステナブルな世界」へ | 2023年 | JICA編 | SDGsとJICAの取り組みを事例で解説。理念と実践をつなぐ分析が豊富で教育にも活用可能。 |
日本型開発協力とソーシャルイノベーション:知識創造が世界を変える | 2016年 | 野中郁次郎・JICA研究所編 | 知識経営論を応用し、国際協力を「共創」として捉える。7つの事例で理論と現場を結びつける。 |
異文化に身を置くすべての人へ | 2020年 | JICA国際栄養士ネットワーク編 | 栄養士たちの異文化体験記。専門性と個人の声が融合し、協力の等身大の姿を伝える。 |
まとめ
これら6冊を通じて、JICAの国際協力を 「理念」から「現場」、そして「個人の体験」まで多角的に理解できる 構成になっています。入門書から始めれば全体像がつかめ、協力隊の現場体験や教育・文化活動を知ることで、協力のリアルに迫ることができます。さらにSDGsやソーシャルイノベーションといったテーマを通して、国際協力の新しい価値や可能性を体系的に学べます。
つまり、本でJICAを学ぶことは、単なる知識の習得ではなく、「なぜ日本が国際協力を行うのか」「その現場で人と人がどうつながるのか」 を深く考えるきっかけになります。これらの書籍は、国際協力に関心を持つ学生から実務者、そして一般の読者まで幅広い層におすすめできる学びの入口となるでしょう。