人間が支配する世界から、猿が文明を築く世界へ――。 1968年の公開以来、半世紀以上にわたって進化を続ける伝説のSFシリーズ『猿の惑星（Planet of the Apes）』。 本記事では、映画初心者の方でも楽しめるよう、ネタバレなし・やさしい言葉・でも内容はしっかり詳しくをテーマに、 その魅力・歴史・テーマ・世界観を13章にわたって徹底解説します。
『猿の惑星』はただのSFではありません。
「もし、支配する立場が逆転したら？」という、人類の根本に迫る寓話です。
映画を観たことがない方も、このガイドを読めば「なぜこのシリーズが映画史に残るのか」がきっと分かります。
物語の壮大さと哲学的な奥行きを、やさしく紐解いていきましょう。
さあ、知恵と本能がせめぎ合う“もう一つの地球”へ。 あなたの常識が覆る、驚きと発見の旅に出かけましょう。🌍✨
猿の惑星とは？ 🪐🐵
『猿の惑星』（Planet of the Apes）は、1968年に誕生したアメリカのSF映画シリーズです。 人類が猿に支配されるという衝撃的な世界観で、誕生から半世紀以上たった今も語り継がれています。 一見すると「猿が人間を支配する奇抜な話」ですが、実はこの作品には、文明の危うさ・人間の傲慢さ・種の逆転といった深いテーマが隠されています。
最初の映画『猿の惑星（1968）』は、宇宙飛行士が未知の惑星に不時着し、そこが猿が文明を築き、人間が野生化している世界だと気づく物語。 そのラストは映画史に残る衝撃の名場面として有名で、多くの人に「SFの概念を変えた」と評されました。 以降、シリーズは時代を追うごとに、猿と人間の関係、進化や倫理、社会の崩壊と再生といったテーマを拡張し続けています。
――ただのSFではなく、「もし私たち人間が“支配される側”になったら？」という問いを投げかける、哲学的なエンタメ作品です。
また、このシリーズが長年愛される理由のひとつに、世代ごとの再解釈があります。 1970年代には社会派ドラマとして、2000年代には映像革命のリメイクとして、2010年代にはモーションキャプチャ技術を用いたリアルな“感情を持つ猿たち”の物語として蘇りました。 そして最新作『猿の惑星／キングダム（2024）』では、人類が衰退した遥か未来で、新たな文明を築く猿たちの社会を描いています。
このように、「猿の惑星」は単なるシリーズではなく、時代ごとに変化し続ける“鏡”のような存在です。 科学技術の進歩や社会問題、AIや差別といった現代的テーマにも通じるため、今の時代に見ると新しい発見があるでしょう。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、物語の構造はとてもシンプル。
「猿が支配する世界で人間がどう生きるか」という一点を軸に、冒険・アクション・ドラマの全てが詰まっています。 SFが苦手な人でも、ストーリーを追うだけで充分に楽しめます。
『猿の惑星』シリーズを通して描かれるのは、「人間の本質とは何か」という普遍的なテーマです。 猿たちは単なる敵ではなく、私たち人間そのものを映す存在。 だからこそ、どの世代が見ても「これは自分たちの話かもしれない」と感じるのです。
これからシリーズ全体を見ていくと、SFでありながら、社会と倫理を問う壮大なドラマとしての魅力が見えてきます。 次章では、そんなシリーズに流れる共通テーマ──“支配と反逆”、“文明と野生”──について、もう少し深く掘り下げていきましょう。🚀✨
シリーズに共通するテーマ 🧭
『猿の惑星』は、派手なアクションや冒険の奥に、“人間とは何か”を静かに問いかける物語です。 作品ごとに時代や登場人物が変わっても、根っこで響き合うテーマはほとんど同じ。ここをつかむと、どの作品から見ても迷いません。まずは“軸”になる考え方をやさしく整理します。🐵✨
人間が支配される側に回ると、ふだん意識しない不公平や偏見が浮き彫りになります。 物語は“立場が変われば正しさも変わる”という現実を見せ、権力の使い方と弱者の声に目を向けさせます。 難しい理論は不要。視点がひっくり返るだけで、世界の見え方がガラッと変わる――その体験がシリーズの核です。
便利さや技術が進めば幸せになれる――その“常識”を作品は疑います。 歴史の循環や文明の脆さが繰り返し描かれ、 「私たちの“当たり前”は、条件が変われば簡単に壊れる」という教訓が滲みます。 だから観終わったあと、ふだんのニュースや社会問題の見え方が少し変わるのです。
ことばは知性の証であると同時に、差別や支配の根拠にもなります。 誰の言葉が信じられ、誰の言葉が無視されるのか――この線引きが対立を生みます。 シリーズは、対話の可能性とレッテル貼りの危険をシンプルなやり取りで示し、 「伝わること」と「わかり合うこと」は別だと教えてくれます。
科学は人を救う力でもあり、社会を揺らす力でもあります。 「できるからといって、必ずしもしていいとは限らない」。 研究や技術が広がるときに必要なのは、責任と説明と制御。 作品は派手な装置を見せながら、最後はとても人間的な“線引き”の話に着地します。
大きな戦いの裏で、家族・仲間・師弟のつながりが静かに物語を動かします。 血のつながりだけでなく、共に過ごし信頼を重ねる関係が価値観を次世代へ渡していく。 この温度があるから、シリーズは“社会の話”でありながら“私たちの話”として胸に残ります。
ちがいは恐れを生みますが、同時に可能性でもあります。 シリーズが描くのは、境界の作り方とルールの合意。 “共存”は理想論ではなく、条件の設計と信頼の積み上げという現実的な営みだと教えてくれます。
アクションや冒険を楽しみつつ、次の3つの問いだけ覚えておくと理解がぐっと深まります。
1) いま誰が語る側で、誰が語られる側？
2) この世界のルールを決めているのは誰？ それは“いつ”“どうやって”決まった？
3) ちがいを脅威として扱っている？ それとも資源として活かそうとしている？
『猿の惑星』（1968年）
『猿の惑星：創世記（ジェネシス）』（2011年）
『猿の惑星／キングダム』（2024年）まとめると、シリーズは「視点の入れ替え」で世界を見直す練習帳です。 難解な哲学を知らなくても、登場人物たちの選択や会話を追うだけで、支配／倫理／共存といった大きなテーマが自然と体に入ってきます。 次章では、物語の原点となったピエール・ブールのSF小説を下敷きに、映画がどの要素を受け継いだのかをやさしく紐解いていきます。📚🚀
ピエール・ブールのSF小説 📚🐒
『猿の惑星』の世界の出発点は、フランスの作家 ピエール・ブール が1963年に発表した小説 『La Planète des singes（猿の惑星）』です。 映画はこの小説を原案としており、物語の骨格と“文明の逆転”という発想をそのまま受け継いでいます。 ただし、映画と原作では結末や語り口が大きく異なるため、両方を知るとこの世界の深みが何倍にも増します。
人類が星々を旅する未来。主人公たちは遠い惑星に降り立ちます。そこでは、驚くべきことに猿が文明社会を築き、人間は原始的な存在として扱われていました。 猿たちは言葉を話し、都市をつくり、研究をし、裁判を開きます。一方で、人間はペットや実験動物として扱われるのです。 主人公はその世界で「人間にも知性がある」と証明しようとしますが、彼の存在は社会の根幹を揺るがしていきます。
ブールが描いたのは、単なるSFではなく、文明の皮肉でした。 科学を誇る人類が、自分たちの傲慢によって滅びる。 進化した猿たちは、かつて人間が行った行為をそっくり繰り返します。 つまり「知性とは何か」「進化とはどこへ向かうのか」を逆転の構図で突きつける物語なのです。
「人間が築いた文明は、人間なしでも続いていく。だが、その意味を理解できる者はいない。」
小説は航海日誌や手紙の形式で語られます。 読者は徐々に状況を理解していき、最後に全体像が見えてくる構成です。 その語りの仕掛けが読後の驚きを生み、読者自身が「もし自分がこの世界にいたら」と想像させる余白を残しています。 ブールの筆致は冷静でユーモラス、時に皮肉。現代のAIや環境問題にも通じる哲学的な響きを持ちます。
映画版では舞台や時代が地球近未来にアレンジされ、ドラマ性と社会風刺がより鮮明になりました。 原作の静かな哲学的トーンを、映像ではアクションや衝撃的なラストで置き換えたのです。 これは、観客が直感的に“自分たちの社会”を重ねやすくする工夫でもあります。 ブールのアイデアを映像化することで、「考えさせるSF」から「感じさせるSF」へと進化しました。
こうして原作と映画を比べると、ブールが描いた“風刺と逆転の思想”がどのように映像の中で生き続けているかがわかります。 映画版を観たあとに原作を読むと、「この場面の考え方はこういう意味だったのか」と気づく瞬間が多いでしょう。 次章では、シリーズを貫く“猿という存在のメタファー”――つまり「猿は何を象徴しているのか？」について掘り下げていきます。🪞✨
オリジナル映画シリーズ（1968〜1973） 🎬
映画『猿の惑星』シリーズの原点は、1968年から1973年にかけて制作されたオリジナル5部作です。 当時としては革新的な特殊メイクと社会風刺、そして“予想外の結末”で、世界中に衝撃を与えました。 ここでは、それぞれの作品が描くテーマと見どころを、映画初心者の方にも分かりやすく紹介します。
『続・猿の惑星』（1970年）
『新・猿の惑星』（1971年）
『猿の惑星・征服』（1972年）
『最後の猿の惑星』（1973年）シリーズは、宇宙飛行士が未知の惑星に不時着するところから始まります。 そこで彼が見たのは、言葉を話し、銃を持ち、人間を支配する猿たちの社会。 驚きと恐怖の中で彼は、世界の真実を知り、やがてその運命に巻き込まれていきます。 物語が進むごとに、世界は時間をさかのぼり、人間と猿の立場が逆転していくのです。
このシリーズが単なるSFではなく「社会風刺」として評価される理由は、 猿たちの社会が現実の人間社会と驚くほど似ているからです。 科学を信奉する層、宗教にすがる層、権力を握る政治家――それらの姿は、現代の構造そのもの。 “人間がつくった問題を、猿が再現してしまう”という皮肉が全編に流れています。
当時の映画界において、このシリーズの猿のメイク技術は画期的でした。 俳優の表情を生かしながらリアルな猿の顔を表現する手法は、後のハリウッド映画に多大な影響を与えました。 これにより、観客は“人間が演じる猿”ではなく、“心を持った別の種族”として彼らを見ることができたのです。 1970年代の技術でここまでの完成度を実現したことは、今でも伝説とされています。
こうして1968年の第1作から始まったオリジナルシリーズは、SFの枠を超えて“人間とは何か”を問い続けました。 次章では、この時期に派生したテレビシリーズを取り上げ、映画とは違う魅力を見ていきましょう。📺🐵
テレビシリーズ（1970年代） 📺🐵
オリジナル映画シリーズの人気を受けて、1970年代には『猿の惑星』の世界観を広げたテレビシリーズが2本制作されました。 映画では描き切れなかった“人間と猿の共存”や“反乱の後の世界”を、より日常的な視点で掘り下げた作品群です。 ここではその2作──実写ドラマ版とアニメ版──の魅力を紹介します。
『猿の惑星（TVシリーズ）』（1974年・全14話）
『新・猿の惑星（アニメ版／Return to the Planet of the Apes）』（1975年・全13話）このTVシリーズは、映画第1作の後日談的な位置づけです。 二人の宇宙飛行士が猿の支配する地球に不時着し、現地の人間たちや猿たちと関わりながら“共存の道”を探します。 オリジナル映画の哲学を受け継ぎつつ、ドラマ的な人間関係を中心に描いたのが特徴です。 各話が独立したエピソード構成で、社会問題や倫理を寓話的に表現しています。
一方のアニメ版は、よりSF色が強い構成で、未来技術や文明崩壊後の社会を描きます。 テレビアニメならではの自由な設定により、地底都市・失われた人類文明・未知の科学といった要素を盛り込み、 当時の子どもたちにも理解しやすいストーリーとして人気を集めました。 作画スタイルはクラシックですが、会話や哲学的テーマは驚くほど深く、“考えるアニメ”とも評されます。
テレビシリーズの最大の魅力は、映画では描ききれなかった“日常のドラマ”にあります。 猿社会の一般市民、農夫、兵士、科学者など、さまざまな立場のキャラクターを通して、 「共存とは何か」「人間とはどんな存在か」を丁寧に問い直しています。 規模は映画より小さいものの、メッセージの重さは決して劣りません。 現代のドラマファンにも響くヒューマンストーリーです。
テレビシリーズは、映画では見られない“日常の猿社会”をリアルに描く貴重な記録です。 ここから物語は一度終息し、2001年にはティム・バートン監督によるリメイク作品として新たな展開を迎えます。 次章では、そのリメイク版『PLANET OF THE APES／猿の惑星』の見どころと特徴を詳しく紹介します。🎬🌌
リメイク作品（2000年代）—『PLANET OF THE APES／猿の惑星』（2001） 🔁🪐
2001年、ティム・バートン監督は『猿の惑星』をまったく新しい解釈でよみがえらせました。 目指したのは“名場面の再現”ではなく、世界観の再構築。 オリジナルのエッセンス（立場の逆転・権力の皮肉・知性の揺らぎ）を残しつつ、豪奢な美術とダークな寓話性を注ぎ込み、2000年代の観客に向けた“別解”を提示しています。 初めて観る人でも理解しやすい直線的な冒険活劇として設計され、テンポ良く世界へ誘ってくれる一本です。
近未来の宇宙基地から物語が始まります。主人公は任務中のトラブルで未知の惑星へ。 そこは、猿が文明の中心で、人間が劣位に置かれた世界。 主人公は知性ある人間たちと出会い、捕らえる側の猿社会と対峙しながら、帰還の道とこの星の秘密を探ります。 大筋は分かりやすい“逃走と交渉の冒険”で、シリーズ初心者でも迷いません。
バートンは“奇妙で美しい”世界づくりの名手。本作でも曲線的な建築、荘厳な装束、儀礼的な所作が、 猿社会の“文化”を視覚的に立ち上げます。荒涼とした砂地や密林のロケーションは、文明の栄枯盛衰を暗示。 台詞はシンプルでも、衣装・所作・セットが価値観の違いを語ってくれるので、映像だけでも意味が伝わる設計です。
本作の特徴は、善悪を単純化しないこと。 尊厳を求める人間もいれば、理解を示す猿もいる。 バートンは「誰が野蛮で、誰が文明的か」という線引きをゆらし、観客に判断を委ねます。 だからこそ、アクションの最中にも倫理の問いが消えません。
デジタル全盛前夜の時代に、特殊メイクはピークの一つに到達。 表情筋の動きを活かすプロテーゼにより、俳優の目や頬のニュアンスが伝わり、 台詞に頼らない“顔の演技”が実現しています。今見ても質感と存在感は抜群で、 モーションキャプチャ主流の後年作品と好対照。シリーズ史の中で技術の橋渡しを果たす重要作です。
・構成：よりアクション寄りでテンポ重視。 ・テーマ：権力・偏見・種間の誤解に焦点。哲学要素はビジュアル象徴に埋め込むスタイル。 ・トーン：ダークで荘厳。笑いは控えめ、儀式と階級の描写が強調。 ・入口として：シリーズ未見でも“逆転世界の体験”が掴める一本。 この違いを踏まえると、2001→2011以降のリブートへと進んでも混乱しません。
『PLANET OF THE APES／猿の惑星』（2001年）・まずは分かりやすい冒険活劇で世界観を味わいたい人
・衣装や美術、特殊メイクの“職人芸”を堪能したい人
・オリジナルと比較しながら、解釈の幅を楽しみたい人
2001年版は、“同じ問いを、別の語り口で”提示する試みでした。 オリジナルの神話性と、後年のリブートのリアリズムの中間に立つ存在でもあります。 次章では、そこからバトンを受け取った2010年代のリブート三部作を、物語の流れと技術進化の両面から紹介します。🧬🔥
リブート三部作（2010年代） 🧬🔥
2011年から2017年にかけて公開されたリブート三部作は、『猿の惑星』の世界を現代技術で再構築した新シリーズです。 “なぜ猿が知性を得たのか”“人間はなぜ滅びたのか”──オリジナルでは語られなかった前日譚を描き、 ドラマ性・映像技術・テーマの深さで、再び世界中に「泣けるSF」ブームを巻き起こしました。
『猿の惑星：新世紀（ライジング）』（2014年）
『猿の惑星：聖戦記（グレート・ウォー）』（2017年）リブート三部作の最大の特徴は、モーションキャプチャ技術の進化です。 俳優の表情を精密に記録し、CG猿へと変換することで、目の動き・息遣い・感情の揺れまでが伝わります。 シーザーを演じたアンディ・サーキスの演技は“史上最も人間らしい猿”と評され、アカデミー賞でも技術部門で話題となりました。
3作を通して描かれるのは、人間と猿の間の恐怖と誤解、そしてそれを超えようとする努力です。 シーザーは「争いを望まないリーダー」として描かれ、復讐よりも理解を選ぼうとします。 その姿は現代社会にも通じる「対立の連鎖を断ち切る勇気」を象徴しています。 争いを終わらせるには“勝つ”ことではなく、受け入れることが必要というメッセージが、静かに心に残ります。
三部作では、都市が崩壊し森に還っていく過程を壮大なスケールで描いています。 朽ちた橋、草に覆われた高層ビル、静寂の中で再生する自然――。 その光景は“人間中心の世界”の終焉を美しく、どこか神話的に表現します。 カメラは戦闘よりも沈黙を映し、観る者に「文明とは何か」を考えさせます。
三部作を通して語られるシーザーの言葉には、シンプルながら深い意味が込められています。 「Apes together strong（猿は団結して強くなる）」は、シリーズを象徴する名セリフ。 それは“連帯の力”を示すと同時に、現代の人間社会への鏡でもあります。 対立ではなく、理解と協力こそが文明をつなぐ道なのです。
リブート三部作は“前日譚”として独立しているため、過去作を観ていなくても問題ありません。 第1作『創世記』→第2作『新世紀』→第3作『聖戦記』の順に見るだけで、物語の起点から完結までを自然に追えます。 ストーリーのテンポも映像も現代的で、シリーズ入門にも最適です。
このリブート三部作によって、『猿の惑星』は再び社会的な話題作へと進化しました。 技術・演出・テーマのすべてが高水準で融合し、映画ファンからも批評家からも高い評価を獲得。 次章では、このリブートを受け継ぎ、新たな世代の視点から描かれた『猿の惑星／キングダム』（2024）── 新章シリーズの世界へと進んでいきましょう。👑🪐
新章シリーズ（2020年代〜）—『猿の惑星／キングダム』（2024） 👑🪐
2024年に公開された『猿の惑星／キングダム』は、リブート三部作から約300年後の世界を舞台にした新章です。 前作までの“シーザーの時代”が神話となり、猿たちは新たな文明を築いています。 監督は『メイズ・ランナー』シリーズで知られるウェス・ボール。映像技術の進化とともに、 「文明を継ぐ者」と「失われた人類」という新たな対立が描かれます。
シーザーの死から数百年後。猿たちは部族ごとの文明を築き、それぞれの王国を形成しています。 しかし、かつての教えを忘れた猿たちが支配を強め、平和を脅かす存在に。 一方、長い間姿を消していた人類が再び現れ、両者の運命が交わり始めます。 主人公ノアは“知恵と勇気”を持つ若い猿として、過去の真実を求めて旅に出るのです。
『キングダム』はリブート三部作の技術をさらに進化させ、 自然光撮影・最新のモーションキャプチャ・リアルな毛並み表現など、圧倒的な映像美を実現しました。 大自然の中で文明を築く猿たちの姿は、まるでファンタジー映画のような壮大さ。 “荒廃ではなく再生”を描く映像が、シリーズの新しい方向性を象徴しています。
本作が描くのは、“記憶を失うことの怖さ”と“過去から学ぶ勇気”。 猿たちはシーザーの思想を神話化し、真意を忘れてしまいました。 それは現代社会における「歴史の風化」への警鐘でもあります。 新たな王国の争いは、やがて“誰が本当に正しいのか”を問う戦いへと変わっていきます。
主人公ノア（オーウェン・ティーグ）は、これまでのリーダー像とは違う“学び続ける若者”。 彼は争いではなく理解を選び、未来を変える勇気を持つ存在として描かれます。 その姿は、旧世代と新世代の価値観の橋渡しであり、“次のシーザー像”としての希望でもあります。 若き視点から見た「猿の惑星」は、より柔軟で感情豊かなドラマに進化しました。
『キングダム』はリブート三部作の続編ではありますが、 物語としては独立して楽しめる構成になっています。 前作を知らなくても理解できるよう、世界観や背景が丁寧に説明されており、 初めて観る人にも“壮大なSF冒険”として十分に魅力的です。
『猿の惑星／キングダム』は、「終わり」ではなく「新たな始まり」を描いた作品です。 争いの時代を経て、再び築かれようとする希望の文明。 この章から、『猿の惑星』シリーズは新しいステージへと踏み出しました。 次章では、ここまでの物語を一度整理し、各作品の時系列とつながりを分かりやすくまとめていきます。🧭📜
各作品のつながりと時系列 🧭📜
『猿の惑星』は「並行する二つの大きな時間軸」で理解すると迷いません。 ひとつはオリジナル時間軸（1968〜1973）。もうひとつはリブート→新章の時間軸（2011〜）です。 どちらも「支配と被支配が入れ替わる世界」を描きますが、物語の始まり方と到着点が異なります。以下の表で、公開順と物語時間を整理します（ネタバレなし）。
| 物語の時代 | 作品（公開年） | つながり・位置づけ（ネタバレなし） | キーワード |
|---|---|---|---|
| 遠い未来 | 『猿の惑星』（1968） | シリーズの出発点。“逆転世界”を初めて体験する入口。 | 転倒する文明 他者の視点 |
| 同時代〜直後 | 『続・猿の惑星』（1970） | 前作の直後。世界のスケールを縦に拡張。 | 極端な信仰終末感 |
| 地球の過去 | 『新・猿の惑星』（1971） | 視点が地球へ移動。シリーズの因果の輪が見え始める。 | 時間の輪寓話性 |
| 人間の支配下の時代 | 『猿の惑星・征服』（1972） | 「なぜ猿が立ち上がるのか」の原型となる出来事。 | 反乱権力の暴力 |
| 内戦の時代 | 『最後の猿の惑星』（1973） | 初期シリーズの締め。共存の可能性がテーマ。 | 和解の条件歴史は繰り返す |
| 派生 | TV（1974）／アニメ（1975） | 同世界観を拡張。日常や別視点を補完。 | 寓話社会実験 |
| 物語の時代 | 作品（公開年） | つながり・位置づけ（ネタバレなし） | キーワード |
|---|---|---|---|
| ごく近未来 | 『猿の惑星：創世記（2011）』 | 原因と誕生の物語。のちの世界変化の“ゼロ地点”。 | 科学と倫理言語と知性 |
| 数年後 | 『猿の惑星：新世紀（2014）』 | 人間と猿の関係が分岐。信頼と不信の綱引き。 | 共存の条件指導者の責任 |
| さらに時が流れて | 『猿の惑星：聖戦記（2017）』 | 憎しみを超えるか、飲まれるか。理念の継承が焦点。 | 赦し連帯 |
| 約300年後 | 『猿の惑星／キングダム（2024）』 | 思想は神話化し、文明は再編。新世代の価値観へ。 | 記憶の風化新たな王国 |
| 独立系統 | 『PLANET OF THE APES（2001）』 | オリジナルともリブートとも直接は繋がらない別解のリメイク。 | 美術解釈世界観再設計 |
まとめると、物語時間＝「オリジナル系」か「リブート〜新章系」かを見分けるだけで、全体像は一気にクリアになります。 次章では、この時系列を踏まえて「どこから観るのがおすすめ？」をタイプ別に提案。 初心者・忙しい人・映像重視派など、あなたの嗜好に合わせた最短ルートを案内します。🗺️🎬
どこから観るのがおすすめ？（タイプ別に提案） 🎬🧭
『猿の惑星』は時系列が複雑そうに見えますが、観る目的に合わせてルートを選べば迷いません。 ここでは、映画初心者・物語重視派・映像好き・考察派など、タイプ別におすすめの順番を紹介します。 どのルートからでもシリーズの魅力をしっかり味わえます。
一番わかりやすいのはリブート三部作から入るルートです。 現代的なテンポと感情表現で、SFが苦手な人でも理解しやすい構成。 猿の文明が生まれるまでのプロセスをゼロから追えるので、シリーズの世界観が自然に頭に入ります。
『猿の惑星：創世記（2011）』→『猿の惑星：新世紀（2014）』→『猿の惑星：聖戦記（2017）』
すべての物語の“流れ”を知りたいなら、時系列順に追うルートがおすすめ。 猿が知性を得る→人間が衰退する→文明が転倒する、という流れを実感できます。 観るたびに「なるほど、ここがつながるのか」と驚きが増していきます。
『創世記（2011）』→『新世紀（2014）』→『聖戦記（2017）』→『キングダム（2024）』→『猿の惑星（1968）』
特殊メイクの進化やCG技術の進歩を楽しみたい人には、公開順が最適。 時代ごとに映像表現がどう変わったかが一目でわかります。 特に1968年版と2011年以降の差は、映画史そのものの進化を見るような体験です。
『猿の惑星（1968）』→『続・猿の惑星（1970）』→『新・猿の惑星（1971）』→『征服（1972）』→『最後（1973）』→『創世記（2011）』→『新世紀（2014）』→『聖戦記（2017）』→『キングダム（2024）』
社会風刺や哲学を味わいたい人は、オリジナル→リブートの順で観るのがベスト。 “支配と自由”“科学と倫理”というテーマが、時代を超えてどう再解釈されたかが見えてきます。 オリジナルで問いを受け、リブートで答えを探す──そんな知的な体験ができます。
『猿の惑星（1968）』→『創世記（2011）』→『聖戦記（2017）』→『キングダム（2024）』
とにかく「分かりやすくて感情移入できる順」がいい人は、 『創世記（2011）』→『新世紀（2014）』→『聖戦記（2017）』の三部作を一気見するルートがおすすめです。 3本で完結するドラマとしても完成度が高く、最後まで一気に観たくなるはずです。
こうして自分に合った観賞ルートを選ぶことで、『猿の惑星』は“難しいSF”ではなく、感情で楽しめる人間ドラマになります。 次章では、映画以外に広がる『猿の惑星』の世界──派生作品やその他メディアについて紹介します。🌍📺
派生・その他メディア 🌍📺🎮
『猿の惑星』は映画シリーズだけでなく、テレビ・アニメ・小説・ゲーム・コミックなど、さまざまなメディアに広がっています。 これらの派生作品は本編を補完するだけでなく、テーマや世界観を別の角度から掘り下げており、 シリーズ全体をより深く楽しむヒントがたくさん隠されています。
映画のスピンオフとして制作されたTVシリーズ『猿の惑星（1974）』は、 二人の宇宙飛行士が猿の支配する地球で生き延びる物語。 全14話で、映画よりも人間と猿の交流や社会問題を丁寧に描いています。 制作当時は低予算ながらも、ストーリー構成の完成度が高く、ファンの間では「隠れた名作」として知られています。
『Return to the Planet of the Apes』のタイトルで放送された全13話のアニメ版。 子ども向けながら、哲学的テーマや社会的寓話が含まれ、当時のアニメとしては異色の存在でした。 SF要素や神話的モチーフが強化され、色彩豊かなビジュアルで「猿の惑星」を新しい層に広めました。
ピエール・ブールの原作小説『La Planète des Singes（猿の惑星）』（1963）は、 映画化後も各国で翻訳・再版され続け、現代文学としても評価されています。 一部では小説の語り口を再現したリテラリーリメイクや、 “もし現代にこの設定が起きたら”というパラレル小説も登場しました。 原作を読むと、映画では語られなかった“哲学の根”が理解できます。
1970年代から現在まで、アメリカでは複数の出版社がコミック版を制作しています。 中でもBoom! Studiosによるシリーズは、オリジナル映画とリブート三部作をつなぐ“空白の物語”を描いており、ファン必見。 登場人物の心理や社会の構造を丁寧に掘り下げ、映画をより深く理解できる構成です。
映画の世界を体験できるゲームも登場しています。 『Planet of the Apes』（2001／PlayStation・PC）は、プレイヤーが“猿社会に迷い込む人間”として生き延びるアドベンチャー。 また『Planet of the Apes: Last Frontier』（2017／PS4・PC）は、映画と同じ世界観で展開する選択型ストーリーゲーム。 プレイヤーの判断によって結末が変化する“インタラクティブ映画”のような作品です。
シリーズの人気に合わせて制作されたドキュメンタリー番組も多数。 特に『Behind the Planet of the Apes』（1998）は、メイク技術や撮影秘話をまとめた必見の一本です。 また近年では、リブート三部作のVFX制作を追うメイキング映像も豊富で、映画ファンにとって貴重な資料となっています。
このように『猿の惑星』は、映画だけでなく多様なメディアで進化を続けてきました。 最終章では、この壮大なシリーズが今後どこへ向かうのか――続編や今後の展開について最新情報をまとめます。🪐✨
今後も続編は作られる？ 🔮🪐
結論から言うと、続編の計画は前向きに動いています。現時点（2025年10月25日）で、スタジオと監督サイドは「この世界をさらに広げる」方針を公言しており、次作に向けた開発が進行中です。具体的な公開日や物語の詳細は未発表ですが、シリーズは“単発”ではなく複数作での構想を念頭に置いています。
2024年の『猿の惑星／キングダム』は、世界興行で約4億ドル規模の成績（推定値）を記録し、シリーズの商業的な体力を再証明しました。ヒットの継続は次作のゴーサインに直結します。
スタジオ側も「アバター／エイリアン／プレデター／猿の惑星」の四大フランチャイズを今後の柱に据えると発言しており、優先度は高いままです。これは“作る意思”の明確なサインです。
監督ウェス・ボールはインタビューで、複数本にわたる物語設計を示唆しています。『キングダム』を“出発点”として、若い世代の視点から「記憶・継承・再生」を軸にした旅を段階的に描く考えです。
そのうえで、続編は前作の結末をそのまま引き伸ばすのではなく、新しい部族・地域・価値観を掘り下げる拡張型の世界観になる見込み。これは“毎回の到達点を変える”設計で、初心者でも途中から入りやすい構図です（ストーリーの重大な種明かしには触れていません）。
産業情報のリスト上では、無題の続編企画が「開発初期」に位置づけられています。これは脚本作業・体制づくり・予算の見積もりなど、実制作の前段階が進行していることを意味します。
なお、スタジオの公開スケジュールは流動的で、他シリーズ（『エイリアン』『プレデター』など）との“巡航速度”を調整しながら決まります。ここは過去の発言どおり、数年スパンのペース配分が前提と考えるのが自然です。
公開年やサブタイトルが固まる前に、まずキャスティング情報や撮影開始報道が出ます。監督・主要キャストのギャラ交渉やロケ地確保のニュースが見え始めたら、公式発表が近い合図です。 また、ホームビデオ版やアワードシーズンの動きに合わせてティザー告知が並走する場合もあります。
・スタジオは「猿の惑星」を今後の柱と位置づけている（優先度が高い）。
・監督は連作前提の語りを示唆（“物語はまだ続く”）。
・業界リストでも続編の早期開発が確認できる（撮影前の準備段階）。
・興行面の成功が次作の後押しになっている。
つまり、『猿の惑星』の旅はまだ終わりません。“記憶を継ぐ者たち”の物語は、次の章でさらに広く・深く描かれていくはず。 新作が動き出したら、このガイドの「テーマ」「時系列」「観る順」を手元に、あなたの入口から次の冒険へ。🐒🚀