介護業界は「人材不足」が慢性的な課題とされています。その背景には高い離職率があり、特に3年以内の離職は他業種よりも高い水準にあります。では、なぜ同じ介護業界でも離職率が低い施設と高い施設があるのでしょうか。
実際にデータや現場調査を踏まえると、離職率が低い施設にはいくつかの共通点が見えてきます。本記事では、その特徴を10項目にまとめ、転職希望者が施設を選ぶ際の参考になる情報を提供します。
明確で適正な人員配置
離職率が低い施設は、職員の数が必要最低限にとどまらず、余裕を持った配置をしています。十分な人員が確保されていると、一人ひとりの負担が減り、無理のない働き方が可能になります。人手不足で常に走り回る環境と比べて、職員の定着率は格段に高くなります。
管理者のマネジメント力が高い
介護施設では、管理者やリーダーのマネジメント力が職場環境を大きく左右します。指示がわかりやすく、現場の声を吸い上げて改善につなげられる管理者のもとでは、職員の不満が溜まりにくく離職を防ぎやすくなります。
教育体制が整備されている
新人教育やOJTが充実している施設は離職率が低い傾向にあります。「入職しても放置される」ような環境では早期離職が多発しますが、逆に研修制度が整っていれば安心して成長でき、職員の定着につながります。
職員同士の人間関係が良好
介護職の離職理由として最も多いのが人間関係です。離職率が低い施設は、チームワークを重視し、相談しやすい雰囲気があります。先輩が後輩をフォローする文化が根付いているかどうかが大きなポイントです。
業務負担を軽減する仕組みがある
ICT導入や介護ロボット、記録の電子化などで職員の業務負担を減らしている施設は定着率が高い傾向にあります。体力的な負担だけでなく、記録作業や雑務の効率化が進むと、職員は本来のケアに集中できるため満足度が高まります。
給与や待遇が地域平均以上
介護業界全体の給与は改善傾向にありますが、特に離職率が低い施設は処遇改善手当や夜勤手当をしっかり支給し、地域平均よりも高い水準を維持していることが多いです。「頑張っても報われない」という不満が少ないため、長く働く動機づけになります。
キャリアアップの道筋が明確
介護福祉士やケアマネジャーなど資格取得を支援し、キャリアパスを明示している施設は離職率が低い傾向にあります。将来的に主任や管理職を目指せる環境があると、「長く働いてスキルを磨きたい」という意欲が生まれやすいのです。
ワークライフバランスを尊重
休日や勤務時間の調整が柔軟で、家庭や子育てとの両立をサポートする施設は定着率が高い傾向にあります。特に夜勤専従や日勤専従など、多様な勤務形態を認めている職場は離職が少なくなります。
利用者との関係が安定している
離職率が低い施設では、利用者や家族との信頼関係が構築されているケースが多いです。トラブルやクレームが少ない環境は職員のストレスを減らし、働きやすさにつながります。逆に利用者との関係が不安定だと職員に過大な負担がかかり、離職の原因となります。
組織としての理念が明確で共有されている
「どんな介護を目指すのか」「施設の理念や方針は何か」が明確に示され、それを職員全体で共有できている施設は離職率が低い傾向にあります。理念が曖昧で現場任せになると方向性がばらばらになり、不満や不信感が募りやすくなります。
まとめ 離職率が低い施設を見抜く視点
離職率が低い介護施設には、人員配置、マネジメント、教育、人間関係、待遇など複数の共通点があります。転職を考える際には、求人票だけではなく、面接や見学で以下の点をチェックするとよいでしょう。
- 教育制度は整っているか
- 職員同士の雰囲気は良いか
- ICTやロボットなど負担軽減の工夫があるか
- キャリアアップの支援体制があるか
これらを確認すれば、離職率の低い職場を見極めることができます。介護業界全体で人材不足が続く中、働く側が職場を選ぶ力を持つことがますます重要になっています。