介護職と聞くと「給与が安い」というイメージを持つ人は少なくありません。確かに一昔前までは、重労働で低賃金という印象が強く、他業界と比べて待遇が劣るといわれてきました。
しかし近年は状況が変わりつつあります。国による処遇改善加算や介護職員等ベースアップ加算の導入により、賃金は着実に上昇してきています。さらに地域差や施設形態によって、年収水準には大きな違いが見られるようになってきました。
本記事では、最新のデータをもとに介護職の地域別年収の傾向を解説し、転職を検討する人にとって有益な視点を提示します。
介護職の平均給与は上昇傾向にある
厚生労働省の調査によれば、介護職全体の平均給与は過去10年で数十万円規模の上昇を見せています。特に2019年以降は処遇改善策が相次ぎ、月額で1万円前後の上乗せが行われた結果、年収ベースで20万円以上増えたケースも少なくありません。
つまり「介護=低賃金」というイメージは必ずしも当てはまらず、職種や勤務地によっては他業界と同水準、あるいは上回るケースすら見られるようになってきたのです。
地域別でみる介護職の年収マップ
介護職の給与は全国一律ではなく、地域によって差があります。これは物価水準や人材不足の度合い、自治体の施策などが影響しています。
- 首都圏エリア
東京・神奈川・千葉・埼玉などの首都圏は、全国平均と比べても年収が高い傾向にあります。人材不足が深刻なため給与水準を上げて募集する施設が多く、年収400万円を超える求人も珍しくありません。 - 中京・近畿エリア
愛知や大阪などの大都市圏も首都圏に次いで給与が高めです。製造業など他産業との人材獲得競争が激しいため、介護業界も待遇改善を進めています。 - 地方都市圏
札幌、仙台、福岡といった政令指定都市では、地域全体で介護ニーズが高まり給与が上昇傾向にあります。ただし首都圏や中京圏に比べるとやや抑えられる傾向です。 - 中山間地域や人口減少地域
人口が少ない地域では求人そのものが限られ、給与水準も低めになるケースが見られます。ただし、住宅手当や通勤手当など地域独自の支援が厚い場合もあります。
年収に影響する要因は「地域」だけではない
給与の高さは地域差だけでなく、施設形態や職種によっても左右されます。
- 施設形態の違い
特別養護老人ホームや病院は夜勤手当が加わりやすく、年収も高めになる傾向があります。デイサービスや訪問介護は日勤中心で働きやすい反面、給与はやや低めに設定されることが多いです。 - 職種の違い
介護福祉士などの国家資格を持っていると資格手当がつき、平均より高い年収が期待できます。さらに生活相談員やケアマネジャーといった職種は、夜勤がないにもかかわらず年収400万円以上になるケースもあります。 - 経験年数とキャリアアップ
経験を積み、主任やリーダー、施設長といったポジションに昇進すれば、年収は大きく伸びます。特に施設長クラスでは500万〜600万円台に到達する事例もあります。
「給与が安い」と思われる理由
ではなぜ、いまだに「介護は給与が安い」というイメージが根強いのでしょうか。
- 初任給ベースでは他業界と比べて低く見える
- 夜勤や資格取得を前提にしてようやく平均以上になる
- 地域差が大きいため、低い水準の情報だけが広まる
こうした要因から、介護職全体のイメージが固定化されていると考えられます。
今後の介護職給与の展望
少子高齢化が進む中で、介護職員の確保は社会全体の課題です。今後も国の施策として処遇改善は続けられる見込みで、平均年収はさらに上昇していく可能性が高いでしょう。
またAIやロボットの導入が進むことで業務負担が軽減されれば、従来よりも効率的に働けるようになり、労働環境全体の改善につながります。その結果、給与水準と働きやすさの両面でバランスが取れていくと期待されています。
まとめ 地域とキャリアを意識すれば介護職の年収は伸びる
「介護職=給与が安い」という時代は終わりつつあります。確かに地域や職種によって差はありますが、首都圏や大都市圏では平均以上の収入を得ることが可能です。資格取得やキャリアアップによって、さらに高い年収を目指すこともできます。
転職を検討する際は、求人票の給与額だけを見るのではなく、「地域差」「施設形態」「キャリアパス」を意識して選ぶことが重要です。介護職は今後も需要が高まり続ける業界です。しっかりと情報を見極めれば、安定とやりがいを両立できる働き方を実現できるでしょう。