- 📝タランティーノが語る「21世紀ベスト20映画」とは?
- 🎬映画一覧
- 🎥タランティーノ監督について
- 🏆1位『ブラックホーク・ダウン』
- 🥈2位『トイ・ストーリー3』
- 🥉3位『ロスト・イン・トランスレーション』
- 🎖️4位『ダンケルク』
- 🎬5位『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
- 🎯6位『ゾディアック』
- 🚂7位『アンストッパブル』
- 🔥8位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
- 🧟♂️9位『ショーン・オブ・ザ・デッド』
- ✨10位『ミッドナイト・イン・パリ』
- 🔫11位『バトル・ロワイアル』
- 🐺12位『オオカミは嘘をつく』
- 🤪13位『ジャッカス・ザ・ムービー』
- 🎸14位『スクール・オブ・ロック』
- ✝️15位『パッション』
- 🩸16位『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』
- 🥋17位『チョコレート・ファイター』
- ⚾18位『マネーボール』
- 🩸19位『キャビン・フィーバー』
- 🎶20位『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)
📝タランティーノが語る「21世紀ベスト20映画」とは?
クエンティン・タランティーノ監督は、自身が出演したポッドキャストの中で 「21世紀に公開された映画の中で、個人的に最も愛している20本」 を選び、その理由を丁寧に語っています。
このランキングは、批評的評価や興行データとは無関係で、完全にタランティーノ自身の “映画オタクとしての感性と情熱” に基づいたものです。 そのためジャンルの幅が非常に広く、戦争映画、アニメ、アート映画、ホラー、コメディまで、 まるで宝箱を開けるような多彩なラインナップになっています。
- ・対象は2000年以降の映画
- ・監督1人につき1作品までというルールを設定
- ・“面白さ”よりも“惚れ込んだ度合い”を重視して選出
- ・何度も見返している作品が多く含まれる
1位に選ばれたのは、リドリー・スコット監督の 『ブラックホーク・ダウン』 。
タランティーノは本作について、 「21世紀最高の戦争映画の1本」 と断言し、複数部隊の動きを巧みに組み合わせる編集・構成を“美しい”と評しています。
初見では情報量の多さに圧倒されたものの、繰り返し観るうちに 「完璧なテンポとリズムを持つ構造美」 に気づき、戦闘シーンの没入感とリアリティに強く惹かれていったと語っています。
10位にはウディ・アレン監督作 『ミッドナイト・イン・パリ』 がランクイン。
タランティーノは主演オーウェン・ウィルソンについて、 「普段はそこまで好みの俳優ではない」 と語りながらも、 本作でのウィルソンの柔らかい存在感が映画の雰囲気と完璧に調和しているとして、 「この映画の魅力の中心にいる」 と絶賛しています。
また彼は、本作を“繰り返し観返すタイプの映画”だとも述べており、 その理由として「物語が美しく、鑑賞するたびに温度が変わる」点を挙げています。
ランキング上位には、 『トイ・ストーリー3』、 『ロスト・イン・トランスレーション』、 『ダンケルク』 など、多様なジャンルが混在しています。
これを見ると、タランティーノが映画を “ジャンルで分類しない” “技術力だけで判断しない” “自分が惚れ込んだ瞬間を信じる” といった独特の映画観を持っていることが分かります。
🎬映画一覧
🎥タランティーノ監督について
クエンティン・タランティーノは、1963年生まれのアメリカを代表する映画監督であり、 脚本家、俳優、そして何より“映画オタクの象徴”として知られています。
彼のキャリアは、映画学校ではなくレンタルビデオ店の店員から始まりました。 そこで毎日のように膨大な映画を観続け、ジャンル映画の構造、テンポ、映像表現を体で覚えていったと語られています。 タランティーノの作品に漂う“映画そのものへの愛”は、この時期に培われたものです。
タランティーノ作品の魅力は、その会話劇、暴力描写、時間操作、音楽センスにあります。 日常会話のようでいて異様に引き込まれる“タランティーノ節”のセリフは、多くの映画ファンに支持され、 一見バラバラに見えるシーンを巧みに組み合わせる編集手法も高い評価を得ています。
1990年代以降、彼は一気に世界的映画監督の地位を確立しました。 特に『パルプ・フィクション』は、当時のアメリカ映画に衝撃を与え、 以降のインディペンデント映画の潮流を変えたとされます。
その後も『キル・ビル』『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』など、 彼らしい“ジャンル映画の再構築”を行う作品が高い評価を受け続けています。
タランティーノは監督としてだけでなく、映画の語り手としても注目されています。 映画の技法、俳優の演技、時代背景などについて情熱的に語る姿は、 世界中の映画ファンから「最高クラスの映画解説者」とも呼ばれています。
今回の“21世紀ベスト20”も、単なるランキングではなく、 映画を愛し続けてきた彼が「作品とどう向き合ったか」を示す貴重な発言となっています。
🏆1位『ブラックホーク・ダウン』
クエンティン・タランティーノ監督が21世紀ベスト映画20本の中で堂々の1位に選んだのが、 リドリー・スコット監督の 『ブラックホーク・ダウン』 (2001)。 実際のソマリア内戦を描いたこの映画は、戦争映画という枠を超えて 「映像構築そのものの神業」としてタランティーノに強烈な印象を残しました。
彼が最も評価しているのは、激しい戦場描写そのものではなく、 複数部隊・複数視点を音楽のように統合する編集リズム。 タランティーノはこれを「圧倒的な精度の構成美」と表現しています。
本作の映像はひたすらリアルです。砂埃、混乱、錯綜する無線、迫りくる銃撃── タランティーノは、観客が“理解しながら混乱する”絶妙なバランスを絶賛。 単なるリアリズムではなく、“これは映画として完璧だ”と断言しています。
タランティーノによれば 「観るたびにこの映画は上手くなる」とのこと。 これは彼が特別に認めた作品にしか言わない言葉で、 『ブラックホーク・ダウン』がどれほど精緻かを示しています。
🥈2位『トイ・ストーリー3』
2位に選ばれたのは、ピクサー製作の 『トイ・ストーリー3』 (2010)。 タランティーノはこの作品を「アニメーション映画という枠を超えた感情体験」として高く評価しています。
特に彼が注目するのは、シリーズを追ってきた観客の“成長”を物語に重ねる脚本の構造。 子ども向け作品でありながら、 「別れ」「継承」「自立」という普遍テーマを大人も泣ける形で描き切った点を絶賛しています。
タランティーノが最も強調するのは、シリーズ屈指の名場面である“焼却炉のシーン”。 ウッディたちが手を取り合う瞬間について、彼は 「アニメ史でも映画史でも特別な一瞬」 と語り、 子ども向け映画が持つ感情表現の限界を突破した瞬間として評価しています。
『トイ・ストーリー3』が評価された理由には、 シリーズ全体の締めくくりとして完璧な脚本構造 が挙げられます。
冒険、ユーモア、ノスタルジー、そして別れ── ピクサー作品に求められる全要素が極めて高い水準で統合され、 「3作目で完璧になる稀有なシリーズ」 として賞賛されています。
彼が本作に特別な価値を見出す理由は、 物語が“子どもの視点”だけではなく、 玩具たちのアイデンティティ・存在意義にも踏み込んでいる点にあります。
🥉3位『ロスト・イン・トランスレーション』
3位に選ばれたのは、ソフィア・コッポラ監督の 『ロスト・イン・トランスレーション』 (2003)。
タランティーノが本作に深く惹かれた理由は、 派手な演出ではなく、 “静けさの中にある心の動き”を徹底して描いている点にあります。 彼はこの作品を「何気ない視線や沈黙が物語を動かす映画」と評しています。
ビル・マーレイ演じる中年俳優ボブと、 スカーレット・ヨハンソン演じる若い女性シャーロット。 二人が異国のホテルで出会い、 “言葉にならないつながり”を少しずつ深めていく様子が美しく描かれます。
タランティーノは、この関係性の曖昧さを 「映画でしか表現できない感情」 と絶賛しています。
東京のネオン、ホテルの静けさ、深夜の居酒屋……。 作品の舞台そのものがキャラクターの孤独を包み込みます。 タランティーノは、日本の文化へのリスペクトを込めつつ、 「都市の雑踏が二人の距離を逆に縮めている」と分析しています。
耳元でささやく“誰にも聞こえない言葉”。 この名シーンについてタランティーノは、 「解釈を観客に委ねる勇気ある演出」 と語っています。
🎖️4位『ダンケルク』
4位に選ばれたのは、クリストファー・ノーラン監督の 『ダンケルク』 (2017)。
本作は、第二次世界大戦の「ダイナモ作戦」を題材に、 陸・海・空の“3つの時間軸”を組み合わせて描く、 ノーランらしい緻密な構造を持つ作品です。
タランティーノはこれを 「戦争映画というジャンルを再定義した映画」 として絶賛し、圧倒的な編集技法とサウンドデザインに敬意を表しています。
『ダンケルク』の最大の特徴は、 “1週間・1日・1時間”という異なる時間軸を同時進行で描く手法。
陸の兵士は1週間、海の民間船は1日、空の戦闘機パイロットは1時間── この時間の速度差が編集で絡み合い、 タランティーノ曰く 「息をする暇もない、時計仕掛けのパニック映画」 を生み出しています。
ノーランはほとんどのシーンをCGではなく実写で行い、 IMAXカメラで海と空の迫力を極限まで記録。
タランティーノはこの姿勢を強く支持し、 「映像と音が観客を物理的に包み込む、本物の“体験”だ」 と語っています。
ほとんど会話がないこの映画を、タランティーノは 「映像だけでキャラクターの心理を語る、現代では稀な作品」 と評しています。
特に静寂と爆音を行き来する構成、 映像と音楽が一体化した物語運びは、 彼の中でも“映画史的試み”として高く評価されました。
🎬5位『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
第5位に選ばれたのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督による傑作 『ゼア・ウィルビー・ブラッド』 (2007)。
アメリカ石油産業の黎明期を背景に、石油採掘で成り上がる男・ダニエル・プレインヴューと、 若き牧師イーライの対立を描いた重厚な人間ドラマです。 タランティーノはこの作品を 「俳優の演技・音・映像・脚本がすべて極限に達した、モンスターのような映画」 と評しています。
本作最大の称賛ポイントは、主演 ダニエル・デイ=ルイスの圧倒的な演技。 タランティーノは、プレインヴューを“人間性の奥底を覗き込んだような闇”として絶賛。
PTAの演出と、撮影監督ロバート・エルスウィットのカメラワーク、 そしてジョニー・グリーンウッドによる不穏なスコア。
この三位一体の表現について、タランティーノは 「映画というメディアが持つ力を最大まで引き出した」 と語ります。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は、 成り上がりの光と影、欲望の果て、そして“孤独に取り憑かれた男”の物語。
タランティーノは、この映画のテーマ性について 「アメリカそのものを映した寓話だ」 と語り、21世紀映画の中でも特別な深みを持つ作品として挙げています。
🎯6位『ゾディアック』
タランティーノの21世紀ベスト20で6位に選ばれたのは、 デヴィッド・フィンチャー監督の緻密な犯罪サスペンス 『ゾディアック』 (2007)。
1960〜70年代のサンフランシスコで実際に起きた未解決事件 「ゾディアック事件」を追う記者・刑事・漫画家たちの執念と崩壊を描く本作。 タランティーノはこれを 「フィンチャーが到達したドキュメンタリー的スリラーの最高峰」 と賞賛しています。
一般的な犯罪映画が“犯人逮捕”をゴールに置くのに対し、 本作は犯人が捕まらない現実をそのまま描くという大胆な構造。
タランティーノはこのアプローチを 「観客を捜査官に変える映画」 と評価し、 緻密な証拠の積み上げと、登場人物の焦燥をシンクロさせる演出に強い興味を示しています。
灰色がかったSF的な質感、無機質で冷たいサンフランシスコの街、 カメラの動き、カーター・バーウェルの音楽── すべてが“ゾディアックの恐怖”を増幅するよう設計されています。
タランティーノは、 「フィンチャーはまるで外科医のように正確に映画を切り開く」 とその職人的演出を絶賛。
ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニー・Jr、マーク・ラファロ。 ゾディアックを追う男たちの人生が少しずつ壊れていく過程を、 3人がそれぞれ異なる温度で演じきっています。
タランティーノは特に、 「ギレンホールが徐々に狂気にのまれていく過程の描写」 を絶賛しています。
🚂7位『アンストッパブル』
タランティーノの21世紀ベスト20の第7位には、 トニー・スコット監督の熱狂的アクション作 『アンストッパブル』 (2010)が選出されました。
無人の暴走貨物列車を止めようと奮闘するベテラン運転士と新人車掌。 いわば“線路版スピード”とも言われるシンプルなプロットですが、 タランティーノはこれを 「アクション映画が到達しうる理想形」 と絶賛しています。
タランティーノが最も評価しているのは、 トニー・スコットの“動きの美学”。
風を切る列車、地響きのような走行音、ヘリとの連動カット、 そして走る列車上の決死のアクション。 あらゆるカットが「生き物のように躍動している」と語ります。
経験豊富なベテラン(デンゼル・ワシントン)と、 失敗を抱えた若い車掌(クリス・パイン)が衝突しながらも成長していく物語。
派手さよりも、 “現場のリアルなプロフェッショナリズム” を丁寧に描いた点が、タランティーノの心を掴んだと考えられます。
物語のほとんどが“暴走する1本の列車”という極端に絞られた状況で進行。 それにもかかわらず観客を飽きさせないテンポと緊張感は圧巻です。 タランティーノはこれを 「トニー・スコットの才能が最後に到達した境地」 と高く評価しています。
🔥8位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
タランティーノが21世紀ベスト20の第8位に選んだのは、 ジョージ・ミラー監督の超絶アクション大作 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 (2015)。
全編の8割以上が“カーチェイス”という大胆不敵な構成。 しかしタランティーノはそこに敢えて挑むミラー監督を 「最も若々しい70歳の監督」 と最大級の賛辞で評価しています。
本作の特徴は、CGに頼らず本物の車・爆発・スタントを多用した “暴力的なほどリアルなアクション”。
砂嵐の中を爆走し、車が宙を舞い、 ギリギリで生死が交錯する瞬間の連続は、 映画という体験の原点を思い出させてくれます。
ミラーが創り上げたのは、タイトルの「マッドマックス」ですら脇役に見えるほど強烈な存在感を放つ、 シャーリーズ・セロン演じるフュリオサという新たなヒーロー像。
タランティーノは彼女を 「21世紀で最も魅力的なアクションヒロイン」 と評し、映画後半に訪れる主従関係の逆転を“鳥肌が立つ瞬間”と語っています。
終末世界で自由を求めて走り続ける者たち。 その姿を、タランティーノは 「破壊の中にこそ輝く希望」 と表現しています。
物語も映像も音楽も、すべてがクライマックスに向かって加速し続ける── これは単なるアクションではなく、 映画そのものが暴走する体感型シネマ です。
🧟♂️9位『ショーン・オブ・ザ・デッド』
タランティーノの21世紀ベスト20で9位に選ばれたのは、 エドガー・ライト監督のゾンビ・コメディ 『ショーン・オブ・ザ・デッド』 (2004)。
英国製の“ゾンビ版ラブコメ”として世界的ヒットを記録し、 ゾンビ映画の文脈をひっくり返した記念碑的作品です。
タランティーノは本作を 「ジャンル映画の文法を完全に理解した者だけが作れる、奇跡のバランス」 と絶賛しています。
本作を語る上で欠かせないのが、エドガー・ライトの 精密すぎるビート刻みの編集(クイックカット) と 音楽とのシンクロ演出。
特にクイーンの「Don’t Stop Me Now」に合わせてゾンビをなぎ倒すシーンは、 タランティーノもお気に入りの場面として言及しており、 「ミュージカルのように“ノリで見せる暴力”の完成形」 と評しています。
主人公ショーンは、ダメ男でありながら心根は優しい男。 彼の恋愛、友情、家族との確執が、ゾンビ災害という極限状況でむしろ鮮明になります。
タランティーノはこの側面を 「コメディなのに胸が締めつけられるほど切ない」 と語っており、特に母親との別れのシーンを高く評価しています。
コメディ要素が強いにもかかわらず、ゾンビ映画としての恐怖演出も一級品。 街が静かに崩壊していく序盤の“気づかぬ恐怖”は、 タランティーノいわく 「まるで名作ホラーのような緊張感」。
✨10位『ミッドナイト・イン・パリ』
タランティーノが21世紀ベスト20の第10位に選んだのは、 ウディ・アレン監督のファンタジー×ロマンティックドラマ 『ミッドナイト・イン・パリ』 (2011)。
1920年代のパリへ“真夜中だけタイムスリップする”というファンタジー設定を、 非常に上品でロマンチックなトーンで描いた名作です。
タランティーノは本作について、驚くべきコメントを残しています。 彼は主演のオーウェン・ウィルソンについて 「普段はそこまで好みの俳優ではない」 と語りながらも、 この映画における彼の存在感を 「作品全体のムードと完璧に調和している」 と評価しています。
パリの街並み、クラシックカー、ジャズ、1920年代の芸術家たち。 ウディ・アレンは現実と幻想の境界をふわりと溶かし、 “誰もが心の奥に持つノスタルジー”を映像化しています。
タランティーノは、映画全体に漂う静かな高揚感を 「観るたびに味わいが増す“魔法のような映画体験”」 と語っています。
主人公ギルは、憧れの黄金時代=1920年代パリへと誘われながらも、 現実との折り合いをつけなければならない葛藤に苦しみます。
タランティーノはこのテーマを 「映画そのものが常に抱える宿命──“過去への愛”とどう向き合うか」 として捉えている様子。
🔫11位『バトル・ロワイアル』
タランティーノの21世紀ベスト20で11位に選ばれた日本映画こそ、 深作欣二監督の衝撃作 『バトル・ロワイアル』 (2000)です。
中学生が無人島で“殺し合い”を強制されるという、過激かつ社会性の高いテーマで世界中を揺るがした問題作。 タランティーノはこの作品を 「21世紀に入って最も衝撃的で、最も美しいアクション映画」 と語っています。
深作欣二監督の演出は、暴力を残酷に、しかしどこか映画的に美しく描くことで知られています。 『バトル・ロワイアル』ではその美学が極限まで研ぎ澄まされ、 未来の日本を舞台にした異様な緊張と恐怖、そして冷酷なゲームの迫力が支配します。
彼は特に、深作監督の“生の暴力を映す覚悟”に心から敬意を示しています。
物語の中心は、クラスごとに島へ連行され、 最後の一人になるまで殺し合いを強制される中学生たち。
タランティーノは、 「若者の純粋さと暴力が同居する世界観が、比類なき緊張を生む」 とそのドラマ性を評価しています。
特に、友情・恋・恐怖・裏切りが一夜に凝縮される脚本の構造を “完成された寓話”と呼んでいます。
北野武(ビートたけし)が演じた教師キタノの冷酷で奇妙なキャラクターも、 タランティーノのお気に入りポイント。
彼はキタノの演技を 「静かで狂っていて、恐ろしくて、完璧に映画的」 と語り、ラストの対峙シーンを絶賛しています。
🐺12位『オオカミは嘘をつく』
タランティーノが21世紀ベスト20で12位に選んだのは、 アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド監督によるダークスリラー 『オオカミは嘘をつく』 (2013)。
イスラエル映画として世界的ヒットを記録し、 緊張・暴力・ブラックユーモアを融合させた“衝撃のデビュー作”として高く評価されました。
『オオカミは嘘をつく』を語る上で外せないのは、 一切先が読めない脚本構成と、容赦のない展開の連続。
タランティーノはこの点について 「観客を振り回す快感が完璧」 と絶賛し、 物語のターニングポイントが“予測不能な角度からやってくる”と評価しています。
少女失踪事件を背景に、刑事・容疑者・犯罪者の思惑が入り乱れ、 事態は雪だるまのように悪化していく――そのテンションが圧倒的。
タランティーノは、キャラクターたちが追い詰められるほど “本性があらわになっていく心理描写” に魅了されています。
暗い部屋、音の使い方、カメラの揺れまでもが計算されつくし、 デビュー作とは思えない完成度を誇ります。
タランティーノはこの完成度を 「信じられないほど成熟したデビュー作」 と高く評価し、 監督コンビを“次世代の最重要クリエイター”と称賛しました。
🤪13位『ジャッカス・ザ・ムービー』
タランティーノが21世紀ベスト20の第13位に選んだのは、 ジェフ・トレメイン監督、ジョニー・ノックスヴィル率いる 無茶苦茶集団の伝説的映画 『ジャッカス・ザ・ムービー』 (2002)。
危険すぎる悪ふざけ、常識外のスタント、過激なイタズラ… “映画館で爆笑と悲鳴が同時に起こる”唯一無二の体験型コメディです。
タランティーノは本作を、単なるおバカ映像の寄せ集めではなく、 より大胆な言葉でこう表現しています。
つまり、タランティーノは“過激さ”そのものではなく、 編集リズム・構成・テンポの妙を高く評価しているということ。 これは、彼がアクションやコメディの“映画的な構造”に敏感だからこそ。
『ジャッカス』は見た目がめちゃくちゃなだけでなく、 実はメンバー全員がプロ級のスタント技術を持っています。
そのため、痛々しいにもかかわらず、 「本物の肉体が作り出すアクション映画」 として成立している点が、タランティーノには刺さったと考えられます。
映画全体を通して、バカバカしさ・恐怖・笑い・友情が爆発し続け、 観客は90分ずっと振り回されっぱなし。
タランティーノは、この圧倒的なテンションを 「2000年代の映画で最も“生きている”作品」 と絶賛しています。
🎸14位『スクール・オブ・ロック』
タランティーノが21世紀ベスト20の14位に選んだのは、 リチャード・リンクレイター監督 × ジャック・ブラックの名タッグによる音楽コメディ 『スクール・オブ・ロック』 (2003)。
落ちこぼれミュージシャンが名門小学校の“なんちゃって先生”になり、 生徒たちとバンドを組んでロックフェスに挑む―― この無茶な設定が、涙と笑いの名作へと昇華されました。
タランティーノはジャック・ブラックを 「コメディのエネルギーを最もロックに変換できる俳優」 として高く評価。
彼のオーバーアクション、ロック愛、子どもたちへの情熱が、 スクリーンからほとばしるように伝わり、 観る者を自然とワクワクさせます。
本作は単なるコメディではなく、 ロックが持つ自由・情熱・反骨精神を真っ正面から描く“音楽賛歌”でもあります。
AC/DC、Led Zeppelin、The Who など名曲の数々が流れ、 映画自体がライブのような熱量を帯びていきます。
生徒たちはロックを通して自分の才能に気づき、 劣等感や家庭の問題を乗り越えていく。
タランティーノは、この部分を 「リンクレイター監督の繊細さが最も光るパート」 と語っています。
✝️15位『パッション』
タランティーノが21世紀ベスト20で15位に選んだのは、 メル・ギブソン監督による衝撃の宗教映画 『パッション』 (2004)。
イエス・キリストが十字架にかけられるまでの“最期の12時間”を描いた本作は、 映画史に残るほどの暴力描写と圧倒的なリアリティで世界中に衝撃を与えました。
『パッション』の暴力描写は賛否を呼びましたが、 タランティーノはその徹底したリアリティを 「宗教映画の表現を極限まで押し上げた革命」 として高く評価しています。
——タランティーノが本作を“ただの歴史劇ではない”と言い切る理由。
ほぼ全編にわたり、拷問・鞭打ち・苦難が続くため、 初見では思わず目を背けたくなるほどの強烈さ。
しかしギブソンはその暴力を“恐怖のためのショック”ではなく、 信仰と犠牲の意味を観客に突きつけるための映画的表現として昇華しています。
タランティーノは、物語よりも“映画作家の熱量”を重視するタイプ。 『パッション』には、メル・ギブソンのすべてを賭けた狂気と執念が宿っています。
ハリウッドの価値観に真っ向から反する、 宗教的情念むき出しの表現をメジャー映画として成立させた点に、 彼は「作家主義映画の勝利」を見たのでしょう。
🩸16位『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』
16位にランクインしたのは、ロブ・ゾンビ監督の傑作スプラッターホラー 『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』 (2005)。
残虐でクレイジーで、そしてどこか美しい── そんな“ロブ・ゾンビ節”が全開の、カルト映画ファン必見の一本です。
タランティーノは本作を 「アメリカン・アウトロー映画の真の継承者」 として賞賛しています。
彼が特に惚れ込んだポイントは、どこまでも暴力的でありながら、 キャラクターに“奇妙な愛嬌”があるというギャップ。
本作は、殺人一家“ファイヤーフライ一家”が逃亡するロードムービー。 砂埃を巻き上げ、血と狂気を撒き散らしながら走り続ける彼らは、 まるでアウトロー版『イージー・ライダー』。
タランティーノはこの “逃亡劇 × スプラッター × 西部劇的世界観” の混合を大絶賛しています。
70年代のアメリカン・グラインドハウス映画への愛が、 作品の隅々にまで浸透しています。
粗くざらついた映像、強烈な音楽、抗いがたい退廃の美学。 これらはタランティーノ自身の作家性とも深く共鳴する部分です。
🥋17位『チョコレート・ファイター』
タランティーノが21世紀ベスト20の17位に選んだのは、 タイ発のハードアクション 『チョコレート・ファイター』 (2008/プラッチャヤー・ピンゲーオ監督)。
主演ジージャー(ヤーヤー・イン)が見せる格闘アクションは、 当時の世界のアクションファンに“とんでもない怪物が現れた”と衝撃を与えました。
タランティーノは『チョコレート・ファイター』のアクションを 「CGにもワイヤーにも頼らず、肉体の物理法則だけで成立する究極のアクション」 として熱く支持しています。
ジージャーが見せる膝蹴り、回し蹴り、投げ技はすべて実戦さながら。 その痛みと速さは、観客の身体にまで振動が伝わるほど。
自閉症の少女ゼンは、母の治療費を稼ぐために、 闇社会に喧嘩を売りながら奮闘していきます。
脚本はシンプルですが、 ゼンの無垢さと、過剰な暴力の対比が強烈なドラマを生み出します。
『マッハ!』で世界に名を知らしめた監督が、 さらにハードでスタイリッシュなアクションを構築。
特に、屋台街や氷工場での戦闘は、 「どうやって撮ったんだ!?」と驚くほどの生々しさ。
⚾18位『マネーボール』
タランティーノが21世紀ベスト20の18位に選んだのは、 ベネット・ミラー監督による実話ベースのスポーツ映画 『マネーボール』 (2011)。
メジャーリーグ球団“オークランド・アスレチックス”が、 貧乏球団ながらデータ分析“セイバーメトリクス”を武器に 強豪チームを打ち破っていく、まさに“知性の逆襲”ドラマです。
タランティーノが本作を支持する最大の理由は、 アーロン・ソーキンによる脚本の見事さ。
会話はテンポよく、説明は明瞭で、 データ分析という一見地味なテーマを まるでアクションシーンのような緊張感で描き切っています。
ブラッド・ピット演じるビリー・ビーンは、 カリスマでも天才でもなく、 “負け続けてきた男の再起” を体現するキャラクター。
派手なヒーロー像ではなく、 静かに燃える情熱と苦悩を積み重ねる演技こそ、 タランティーノが「これぞ映画俳優の仕事」と評価したポイントです。
オールドスクールな“経験と勘”を重視する球界の伝統と、 新世代が持ち込む“統計学の論理”の衝突。
タランティーノは、この対立構造を 「アメリカ映画の王道に見えて、実は非常にラディカル」 と評価しています。
🩸19位『キャビン・フィーバー』
タランティーノが21世紀ベスト20の19位に選んだのは、 イーライ・ロス監督のデビュー作にして伝説のホラー 『キャビン・フィーバー』 (2002)。
森の中の貸別荘に遊びに来た大学生たちが、 正体不明の“皮膚がただれる奇病”に次々と侵される―― というシンプルながら戦慄の設定で、 90年代ホラーから2000年代ホラーへの橋渡しとなった一作です。
タランティーノは『キャビン・フィーバー』を“衝撃のデビュー作”と評し、 その理由を 「ホラー映画が本来持つべき“不衛生な恐怖”を完璧に蘇らせたから」 と語っています。
普通のホラーのような怪物ではなく、 感染症という現実味のある恐怖を徹底的に描いた点が、 観客の恐怖をよりリアルに刺激します。
イーライ・ロスは、70〜80年代のグラインドハウス的ホラーを研究し尽くし、 その“粘つくような質感”“フィジカルな痛み”を現代風に再構築しました。
皮膚が剥がれる恐怖をじっくり見せる演出は、 タランティーノが愛する“見ていられないのに目が離せない暴力”そのもの。
当時まだ無名だったロスですが、 限られた予算の中で驚くほど大胆な表現を実現。
タランティーノはその才能をいち早く見抜き、 『ホステル』をプロデュースするきっかけにもなりました。
🎶20位『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)
タランティーノが21世紀ベスト20の20位に選んだのは、 スティーヴン・スピルバーグ監督による傑作ミュージカルリメイク 『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021) 。
1961年版を“絶対の名作”と語ってきたタランティーノが、 あえてその後継として高く評価したことは映画ファンの間でも話題に。 彼は本作を 「ミュージカル映画を新しい時代へアップデートした驚異的な試み」 と称えています。
本作でスピルバーグは、カメラワーク・照明・色彩演出を駆使し、 まるで詩のように美しいミュージカル空間を再構築。
彼の演出は1950年代のロマンティックな世界観を保ちながら、 現代的なテンポとリアルな社会性を見事に融合させています。
マリア役のレイチェル・ゼグラーは驚異の新人。 伸びやかな歌声、純粋さ、情熱、そのすべてがスクリーンを輝かせます。 一方で、アリアナ・デボーズはアニータ役でアカデミー賞を受賞。
タランティーノは特にデボーズについて 「映画を乗っ取るほどのエネルギー」 と絶賛しています。
本作はロミオとジュリエットを下敷きにしつつ、 60年前とは違う“今のアメリカ”が抱える問題を色濃く反映。
貧困、差別、暴力、若者の行き場のなさ—— これらのテーマがより明確に、より痛烈に描き出されます。
