『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、 車椅子で暮らす少女ジョゼと、海を愛する大学生・恒夫の出会いを通して、 “世界を知ることの喜びと怖さ”を描いたアニメ映画です。
本作は、田辺聖子さんの短編小説を原作とし、 制作スタジオBONESによる柔らかい色彩と繊細なアニメーションが、 ジョゼの「閉じた部屋の世界」と「外の広い世界」を丁寧に表現しています。
2020年のアニメ版は、原作や実写映画よりも “前向きで温かいストーリー展開”が特徴で、 初めてこの物語に触れる人にもやさしく寄り添う内容になっています。
本記事では、ネット上の評価・口コミを参考にしつつ、 映画の魅力や印象的なポイント、考察を 映画初心者にも読みやすい言葉でまとめています。 作品を観る前の予習としても、観たあとの振り返りとしても役立てていただけると嬉しいです。🌈
『ジョゼと虎と魚たち』とは? 🎬🐯🐟
『ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版)』は、作家・田辺聖子さんの短編小説をもとにした 長編アニメ映画です。車椅子の少女ジョゼと、海が大好きな大学生・恒夫が出会い、 お互いの世界を少しずつ広げていく姿を描いたラブストーリーであり、 “夢をあきらめないこと”や“誰かと生きること”をやさしく教えてくれる作品です。
- 監督
- タムラコータロー
- 制作
- BONES(ボンズ)
- 原作
- 田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」
- 主人公
- ジョゼ(車椅子の少女)/鈴川恒夫(大学生)
物語の始まりは、夜の坂道。足が不自由で車椅子に乗るジョゼが、 一人で散歩に出た帰り、急な坂でブレーキが利かなくなり、 そのまま道路に飛び出してしまいます。そこへたまたま通りかかったのが、 ダイビングショップでバイトをしながら海洋生物を学ぶ大学生・恒夫。 恒夫はとっさにジョゼを助け、そのことがきっかけで、 二人の関係はゆっくりと動き出します。
ジョゼは幼いころから足が不自由で、祖母と二人きりで暮らしています。 祖母は「外は危ないから出ちゃいかん」と言い、 ジョゼもまた、どこか投げやりな気持ちから 「外の世界なんて知らなくていい」と自分に言い聞かせてきました。 そのかわり、彼女には好きなことがあります。 それが絵を描くことと、本の中の世界を想像することです。
ジョゼの部屋には、自分の見た夢や、行ってみたい海、空想の生き物など、 たくさんの絵が貼られています。足は自由に動かないけれど、 心の中では世界中を旅している――そんな繊細で豊かな感性を持った 女の子として描かれています。
一方の恒夫は、「海外の海でダイビングの仕事をしたい」 という大きな夢を持つ大学生です。授業の合間にダイビングショップでアルバイトをし、 海洋生物の勉強に励みながら、海外留学のチャンスを狙っています。
ただの「優しいお兄さん」ではなく、自分の夢に向かって努力している 等身大の若者として描かれているので、観客は彼の迷いや不安にも共感しやすくなっています。 ジョゼと出会うことで、恒夫自身も「夢」と「現実」のバランスに悩むようになり、 物語は単なる恋愛だけでなく、人生の選択の物語として広がっていきます。
この作品で印象的なのは、ジョゼの「狭くて守られた部屋」と、 恒夫の「広くて自由な海」が対比されているところです。 外の世界を怖がるジョゼと、外へ飛び出したい恒夫。 まったく逆の方向を向いているように見える二人ですが、 どちらも「本当は不安で、でも前に進みたい」という気持ちを抱えています。
恒夫がジョゼの家でのアルバイト(世話係)を始めることで、 二人は少しずつ相手の世界に足を踏み入れていきます。 ジョゼは恒夫に連れられて外の街や海へ。 恒夫はジョゼの部屋で、彼女の描くファンタジックな絵や、 ぶっきらぼうだけれど正直な言葉に触れていきます。 その過程が、丁寧な日常描写として積み重ねられていくのが、 この映画の大きな魅力です。
同じ原作から作られた実写映画版と比べると、 2020年のアニメ版は、よりポジティブで前向きなトーンが強いのが特徴です。 ジョゼの描く絵や、彼女が夢見る海のイメージは、 アニメーションならではのやわらかい色彩と光で表現され、 観客も一緒に「ジョゼの想像の世界」を体験できます。
また、車椅子での移動や街の段差など、 障害ゆえの「生きづらさ」もきちんと描きつつ、 全体としては「かわいらしさ」と「力強さ」が同時に感じられる映像になっています。 普段あまり映画を見ない人や、重すぎるストーリーが苦手な人にも、 比較的入りやすい雰囲気の作品と言えるでしょう。
まとめると、『ジョゼと虎と魚たち』は、 「外に出るのがこわい女の子」と「外の世界に飛び出したい男の子」が出会い、 お互いの世界を知ることで、少しずつ前へ進んでいく物語です。 障害や夢といった重めのテーマを扱いながらも、 言葉づかいはやさしく、映像もカラフルでやわらかいので、 映画初心者でも感情移入しやすい作りになっています。
次の章では、この作品がネット上でどのように評価されているのか、 全体的な口コミの傾向をわかりやすく整理していきます。🌈
全体的な評価まとめ 🌈📣
『ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版)』は、「映像の美しさ」「キャラの成長」「やさしい物語」が 多くの視聴者から称賛されています。一方で、障害の描き方や恋愛の展開」に対する意見は分かれやすく、 作品全体としては“明るく前向きな青春ドラマ”として強く受け止められています。 ここでは、ネット上の感想をもとにした全体傾向をわかりやすく整理します。
もっとも多かったのは、「映像が美しい」「色彩がやわらかい」「海の描写が最高」という声です。 特に水族館や海中シーンはアニメならではの表現力が生きており、 “ジョゼの想像する海の世界”が視覚的に体験できる点が大きな魅力として語られています。
また、ジョゼと恒夫の関係がゆっくり変わっていく描写が丁寧で、「心が温かくなる」「前向きな気持ちになる」といった “癒やし系の感動”を受け取る人が多いのも特徴です。
特にラストにかけての展開は希望が強く、「観終わったあと気持ちが軽くなる」「優しい気持ちになれた」という感想が数多く見られます。
一方で、障害の扱い方に違和感を覚えたという意見も一定数あります。 「車椅子のヒロインが“助けられる存在”として描かれている」「現実的な苦しみが薄く、きれいにまとめすぎ」と感じた人もいました。
恋愛の進展についても、「距離が縮まるのが急」「関係性に説得力が弱い」という声があり、 原作や実写版の“よりリアルで苦い関係性”を期待していた人にとっては、 アニメ版の“やさしい空気”が物足りないことも。
それでも、多くの視聴者は「重すぎない雰囲気で観やすい」と評価しており、 否定意見よりも好意的な声のほうが多い印象です。
アニメ制作を担当したBONESはもともと映像クオリティに定評があり、本作でもその実力が発揮されています。 海の光のゆらぎ、街の空気感、ジョゼの部屋に貼られた絵の色彩など、 細かい部分まで“優しい世界観”が一貫していると好評です。
音楽も雰囲気に合っており、穏やかなピアノや温かみのあるBGMが、ストーリーをそっと支えるように流れます。 一歩ずつ前へ進むジョゼと恒夫の姿を、音と色の両方から支えていると言えるでしょう。
全体をまとめると、本作は「重すぎず、軽すぎず、心にやわらかく残る作品」として受け止められています。 “障害”“恋愛”“夢”“自立”というテーマは本来とても重いものですが、 アニメ版は視覚的にも内容的にも柔らかさが重視されており、 多くの視聴者が「見やすさ」と「感動のバランス」を評価しています。
原作の持つリアルさを薄めた点には好みが分かれるものの、 「観終わった後に前向きになれる映画」としての支持は強く、 とくに若い世代や普段映画を見ない人からも「入りやすい」と感じられています。
以上がネット上で見られた全体的な評価のまとめです。 次の章では、より具体的に、視聴者から寄せられた 肯定的な口コミ・評価を詳しく紹介していきます。💐
肯定的な口コミ・評価 💖✨
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、ネット上で「心が温かくなる」「映像が美しい」という ポジティブな感想がとても多い作品です。 とくに“海の描写”“ジョゼのキャラクター性”“前向きなメッセージ”が評価されており、 恋愛映画が苦手な人でも「見やすかった」という声が目立ちます。 ここでは、好意的な意見をテーマごとに整理して紹介します。
最も多かったのは、海のシーンの美しさに感動したという声です。 本作では、光のゆらぎ、水面の反射、海中の静けさなど、 動きや色彩がとても丁寧につくられています。
- 「海のシーンだけで泣きそうになった」
- 「水族館の描写が実写みたいでキレイ」
- 「ジョゼが想像する海の世界が可愛くて好き」
海は恒夫の夢の象徴であり、ジョゼにとっては“行けない場所”であり“あこがれ”でもある場所。 その二人の感情の違いを、映像の色合いや空気感で表現している点が「すごい」と高く評価されました。
ジョゼは最初こそ強気で、ちょっと意地悪にも見えるキャラクターですが、 内側には「本当は外の世界に憧れている不器用な女の子」がいます。 この二面性に共感し、好きになったという声が多数ありました。
- 「ぶっきらぼうなのに可愛い」
- 「絵が好きなところがすごく良い」
- 「素直じゃないけど心は優しい」
- 「成長していく姿に泣いた」
特に、ジョゼが一歩ずつ外の世界に出ていく過程は、 “自分の殻を破っていく物語”として強く支持されています。
恒夫とジョゼの関係が「押しつけがましくない」「自然に距離が縮まっていくのが良い」との評価が多いです。 とくに、ケンカしながらも少しずつ信頼が芽生える流れが「リアルで可愛い」と好評でした。
- 「ゆっくり恋に変わっていく感じが好き」
- 「お互い支え合うのが良かった」
- 「無理やりじゃない距離感が心地いい」
“障害者×健常者”という構図をあまり重くしすぎず、 あくまで 一人の少女と一人の青年の成長と恋 として描いた点が、支持される理由のひとつです。
映像だけでなく、音楽や空気感の“やさしさ”に癒やされたという感想も多く見られます。
- 「音楽が心地よくて聞き入った」
- 「映画全体の優しい雰囲気に包まれる感じ」
- 「ストレスの少ない作品で観やすい」
とくにラスト付近の音楽と映像の組み合わせは 「胸がいっぱいになった」「涙が出た」という声が非常に多い部分です。
本作は「夢」「自立」「勇気」「自由」など、誰にでも響くテーマが込められています。 とくに「自分の世界を広げたいと思える映画だった」という感想が多いです。
- 「やってみようと思えた」
- 「勇気をもらえた」
- 「明日が少しだけ楽しみになった」
障害や恋愛という大きなテーマを扱いつつも、 重すぎず前向きなエネルギーで包んでくれる作品として高く評価されています。
以上が肯定的な評価の主な傾向です。 次の章では、視聴者が感じた否定的な口コミや気になった点について、 丁寧にわかりやすくまとめていきます。🌓
否定的な口コミ・評価 🌓💭
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は多くの視聴者から高く評価されている一方で、 「ここが気になった」「この描写は合わなかった」という声も確かに存在します。 メッセージ性の強い作品だからこそ、恋愛の描き方や障害描写への意見が分かれた印象です。 ここでは、ネットで特に多く見られた“否定的な感想”をテーマごとに整理して紹介します。
最も多かったのは、障害の描写が現実よりも軽く描かれているように感じたという意見です。 物語の中でジョゼは“外の世界に出る勇気”を得ますが、視聴者の一部からは 「現実の困難があまり描かれず、都合よく進みすぎでは?」という声も。
- 「車椅子を扱う場面が簡単すぎる」
- 「段差問題や移動の苦労がさらっと流される」
- 「障害を持つ人の気持ちが簡単には描けていないように感じた」
本作が“爽やかで前向きな作品”であるがゆえに、 リアルな苦しみを期待する人にとっては“軽すぎる”と映る場合があります。
もう一つ多かったのが、恋愛に進む流れが少し急に感じられるという意見です。 出会い→反発→仲良くなる→恋愛、といった典型的な流れが短い時間に詰め込まれているため、 中には「もっと積み重ねが見たかった」と言う声もあります。
- 「気づいたら恋愛になっていて驚いた」
- 「二人の関係が深まる描写が少なめ」
- 「恋愛の説得力が弱い部分があった」
ただしこれは、テンポよく進むアニメ映画ならではの“時間の制限”が原因として挙げられます。
一部の視聴者は、物語の中に見える“救済構図”に違和感を覚えています。 これに対しては「ジョゼが受け身すぎる」という批判も。
- 「助けられる側と助ける側の差が大きすぎる」
- 「ジョゼが依存的になって見えた部分がある」
- 「恒夫が良い人すぎてリアルに感じない」
物語自体はジョゼの“自立”に向けて描かれていますが、そこに至るまでの描写には賛否がありました。
ラストにかけての流れは感動的で評価も高い一方、 「きれいすぎて現実感が薄い」という否定的な意見も一定数ありました。
- 「ご都合主義に感じた」
- 「もっと現実と向き合う描写を見たかった」
- 「感動路線に寄せすぎ」
原作や実写版がややシビアな結末であることから、 それらと比べて“優しすぎる”と思う人もいるようです。
否定的な意見はあるものの、いずれも作品のテーマ性が強いからこそ生まれる議論です。 次の章では、ネット上で特に盛り上がった印象的なシーンや話題を紹介します。🔥
ネットで盛り上がったポイント 🔥✨
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、公開当時からSNSを中心に話題が多く、 特に「海の描写」「ジョゼの成長」「ラストの展開」などがSNSで大きく注目されました。 感動だけでなく、「ここが良かった!」「ここで泣いた!」という感想が自然と共有されやすい映画で、 口コミがどんどん広がったことも特徴です。 ここでは、ネットで特に盛り上がった話題を、印象的なポイントごとに整理します。
本作の中でも特にSNSで話題になったのは、海や水族館のシーンの美しさです。 Twitter(現X)やInstagramでも、「海の光がきれいすぎる」「水のゆれ方が本当にリアル」と大盛り上がりでした。
- 「水族館シーンで完全に心をつかまれた」
- 「海中の静けさと音の演出が最高」
- 「ジョゼの想像の海がかわいすぎる」
とくに、水族館のクラゲや魚の光の動きは“神作画”として拡散され、 アニメとしての表現力を推す投稿が多かったのが印象的です。
ネット上では「ジョゼが強くなる瞬間」に共感する声が多く見られました。 外の世界が怖くても、小さな一歩を踏み出すジョゼの姿は、多くの人の心に刺さったようです。
- 「車椅子でも諦めない姿に勇気をもらった」
- 「外に出て海を見に行くところで涙」
- 「ついに自分の足で“世界を見に行く”決意をした瞬間が良い」
“かわいいヒロイン”としてだけでなく、 “自分の世界を変えていく強い女の子”として多くの支持を集めました。
SNSで最も感情の共有が活発だったのは、終盤の事故〜再生シーンにかけて。 この部分は否応なく涙を誘い、多くの視聴者が「泣いた」「ボロ泣きした」と感想を投稿。
- 「恒夫が動けなくなったシーンで号泣」
- 「ジョゼの選択が尊すぎた」
- 「最後のステージでの場面が胸に刺さった」
ラストの“希望を選ぶ構成”は好意的な声が多く、 原作・実写を知っている人ほど、「アニメ版の救いが嬉しい」と感じたようです。
ジョゼが描く“ファンタジーのような絵”も、大量にシェアされました。 童話の世界のようで、優しくて、あたたかいタッチに「癒された」という声が続出。
- 「ジョゼの描く海の生き物がかわいすぎる」
- 「色使いがやさしくて好き」
- 「絵本を見ているみたい」
ジョゼの内面世界が絵に反映されている表現は、多くの鑑賞者にとって印象深いポイントとなりました。
劇中音楽や挿入音楽もSNSで盛り上がり、 「音楽と映像のマッチングが最高」「エモすぎる」という感想が多く投稿されました。
- 「曲の入り方が神」
- 「静かなシーンの音の余白が良い」
- 「ラストの音楽で涙が止まらなかった」
日常の小さな音とやわらかなメロディが、作品全体を“優しい世界”に仕上げている点が好評です。
このように本作は、視覚・音楽・テーマのどれもがSNSで話題になりやすい構成で、 公開後もしばらく口コミが止まらなかった作品でした。 次の章では、視聴者が「ここはどういう意味?」「なぜこうなった?」と議論した 疑問点や気になるシーンを読み解いていきます。🔍
疑問に残るシーンと解釈 🔍💭
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、ストーリー自体はわかりやすいものの、「よく考えると気になる場面」や 「人によって解釈が分かれそうなシーン」がいくつもあります。 ここでは、ネット上でもたびたび話題になったポイントを取り上げながら、 作品の流れに沿った読み解き方を、映画初心者の方にもわかりやすい言葉で整理していきます。
恒夫が事故に遭い、病院に運ばれたあと。 観客の多くが「なぜジョゼはすぐ会いに来なかったの?」と疑問に感じる場面があります。
表面的に見ると、「薄情なの?」「距離を取ろうとしているの?」と感じてしまうかもしれません。 しかし、ジョゼの性格やこれまでの行動を振り返ると、 そこには彼女なりの「怖さ」と「優しさ」が混ざっているようにも解釈できます。
● 恐れと罪悪感のミックス
自分との関わりがきっかけで恒夫が夢を諦めてしまうかもしれない。 そのことに対する罪悪感と、「自分のせいで彼の人生を縛ってしまうかも」という恐れが、 ジョゼを病院から遠ざけているように見えます。
● 「会いたい」気持ちと、「縛りたくない」気持ちの葛藤
もちろん本音では会いたいはずです。それでもすぐには行けない。 これはジョゼが、「恒夫の夢を奪う存在にはなりたくない」と強く思っているからこそ生まれた距離とも考えられます。 そのためこのシーンは、冷たい態度というよりも、 不器用な“優しさ”と“自立の決意”の表れとして受け取ることもできます。
恒夫の夢である「海外でダイビングの仕事をする」という目標は、 事故によって一度は大きく揺らぎます。このとき「夢を諦めてもいいのか」という問いが、 作品全体を包み込むテーマになっています。
観客の中には「結局、夢はどうなったの?」「ジョゼと一緒にいることと、夢を追うことは両立できるの?」と モヤモヤが残る人も多いはずです。
● “夢を変える”ことは“負け”なのか?
この映画が面白いのは、「夢を最後まで変えないから偉い」とは描いていないところです。 事故やジョゼとの出会いを通して、恒夫の夢は「メキシコで潜ること」から 「自分なりの海との関わり方を見つけること」へと、少しずつ形を変えていきます。
ここには、人生では状況に合わせて“夢の形”を変えていってもいいというメッセージが感じられます。 だからこそ、メキシコ行きの行方をあえてハッキリ描き切らず、 観客に「彼はこれからどう生きるだろう?」と想像させる余白を残しているとも考えられます。
タイトルにある「虎」とは、具体的に何を表しているのか? 映画を観終わったあとも、意外とすぐには答えが出ない人も多いポイントです。
● 「虎」=世界のこわさ、外の危険
ジョゼにとって外の世界は、危険でいっぱいの場所です。 祖母は何度も「外には虎がおる」と言い、彼女を家の中に留めようとします。 ここでいう「虎」=外の世界の危険・不安・差別・偏見など、 彼女を傷つけうるもの全ての象徴として描かれていると考えられます。
● それでも「虎のいる世界」に出ていく物語
重要なのは、物語の終盤に向けてジョゼが「虎がいても外に出る」決意をすることです。 危険がゼロになるわけではない。怖さも完全には消えない。 それでも「自分の足で、外の世界を見てみたい」と思えるようになる――そこに、このタイトルの意味が集約されています。
つまり、『ジョゼと虎と魚たち』は、「虎(こわい世界)と魚(あこがれの世界)のあいだで揺れながら、前に進む物語」だと 解釈することができます。
祖母の死の場面も、観る人にとってはショックが大きいシーンです。 「展開が急すぎる」「もっと描いてほしかった」という声もあります。
しかし物語上は、ここがジョゼが本当の意味で“一人になる”瞬間として機能しています。 祖母の保護も、制限も、同時に失われることで、ジョゼは 「怖いけれど、もう自分で進むしかない」という地点に立たされます。
この突発的な喪失は、現実でもよくある“予告なしの変化”の象徴でもあり、 だからこそ観客は「自分だったらどうするだろう」と考えながら観ることになります。
こうした疑問の残るシーンは、すべてが丁寧に説明されるわけではありません。 そのぶん、観客一人ひとりが自分の経験や価値観を重ねて、 「自分なりの答え」を見つけていく余白が用意されている作品だと言えます。
次の章では、これまでの肯定的・否定的な意見、そして疑問点を踏まえながら、 『ジョゼと虎と魚たち』という作品が私たちに投げかけているテーマやメッセージを、 あらためて整理してまとめていきます。🌈
考察とまとめ 🌈📚
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、ただの恋愛アニメではなく、 「自分の世界をどう広げて生きていくか」という普遍的なテーマを持つ作品です。 ここでは、これまでの評価・感想・疑問点をふまえて、作品全体が伝えようとしているメッセージを わかりやすく整理していきます。
本作の中心には、“外の世界への恐れと憧れ”があります。 ジョゼは長い間、家という安全な空間に閉じこもるように生きてきました。 外には「虎」がいて、自分を傷つけるかもしれないからです。
しかし恒夫との出会いによって、その扉を少しずつ開けていきます。 この流れは、障害の有無をこえて、誰もが感じる「一歩踏み出す怖さ」そのものです。
そして同時に、海の美しさ・街の光・人との交流など、外の世界には 自分の知らなかった喜びがたくさんあることも描かれています。
恒夫は、ずっと「メキシコでダイビングの仕事をする」という夢を抱いていました。 しかし事故をきっかけに、その夢の形は揺らぎます。
この作品が優しいのは、夢が変わることは“あきらめ”ではないと伝えている点です。 「大きな夢を追い続けること」も立派ですが、 現実と向き合いながら形を変え、今できることに向かうこともまた人生だと描いています。
夢が変わる瞬間は苦しい。だけどそれを受け入れることで、 新しい未来が見えてくる──そんなメッセージが込められています。
ジョゼと恒夫の関係は、「助ける側」「助けられる側」という単純な構図ではありません。 二人は互いに影響し合い、支え合いながら成長していきます。
- ジョゼは恒夫に出会うことで世界が広がり、自立の力を得る
- 恒夫はジョゼに出会うことで、“自分の夢の本当の意味”を考えるようになる
この関係性は「依存」ではなく、 “共に歩み、変わっていく”という関係の理想形に近いものです。
タイトルにも入っている「虎」と「魚」。 この2つは、ジョゼの世界を象徴的に表しています。
- 虎=外の世界の恐怖・不安
- 魚=憧れ・自由・可能性
この映画は、「虎(こわいもの)と魚(あこがれ)」の間で揺れる少女が、 自分の足で未来を選び取る物語だと言えます。
最後にジョゼがステージで絵本を朗読するシーンでは、 “虎の世界にも、魚の世界にも、自分は行っていい”という強い決意が感じられます。
アニメ版のラストは、原作や実写映画に比べて圧倒的に優しく、前向きです。 この点には賛否がありますが、アニメ版の方向性としては非常に明確です。
- 見たあとに前向きになってほしい
- 外の世界を怖がる人の背中を押したい
- 夢に悩む人に“ひとつの答え”を示したい
だからこそこの作品は、 「誰かにとっての“やさしい一歩”になれる映画」として支持されています。
総じて『ジョゼと虎と魚たち(2020)』は、 “自分の世界を広げることの喜びと怖さ”を、 色鮮やかで温かいアニメーションで描いた作品です。
映像・音楽・キャラクター描写の調和が心地よく、 普段映画をあまり観ない人でもスッと入り込める構成になっています。
恋愛映画としてだけでなく、 「新しい世界に踏み出す勇気をもらえる物語」として、 これからも長く愛される一本と言えるでしょう。💐
