はじめに|「数字だけで安心」は、むしろ危険
住宅購入を考えるとき、誰もが一度は使うのがローン返済シミュレーションツール。
月々の支払額や総返済額を入力ひとつで計算してくれる便利な機能ですが、
実はこれに頼りすぎることで、**将来後悔する“落とし穴”**にハマる人が後を絶ちません。
この記事では、「シミュレーション依存症」が招く3つの落とし穴と、
それを防ぐための実践的な判断軸・思考法をお伝えします。
シミュレーション依存症とは?
住宅購入における「シミュレーション依存症」とは──
数字上の返済額や金利シナリオだけで判断し、
現実の生活設計・リスク・感情的負担を軽視してしまう状態。
✔ たしかにツール上では「月々○万円でOK」と出ます。
✘ しかしその計算、“変化しない前提”で作られていませんか?
落とし穴①|金利は「上がらない前提」で設計されがち
多くのシミュレーションは「変動金利0.5%」などを前提にしていますが、
これはあくまで**“現在の条件”**での話。
- 将来金利が1%上がれば、月々の返済額は数万円単位で上昇
- 返済総額が数百万円変わることも
→ 変動金利のシミュレーションは「最悪のシナリオ」で考えるべきなのに、
最良の数字だけ見て安心してしまう人が非常に多いのです。
落とし穴②|「生活費」を考慮していない
シミュレーションの多くは、返済額のみを見せて終わりです。
しかし、実際の生活では次のような支出が重なります:
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 修繕積立金(マンション)
- 教育費(年齢に応じて急増)
- 自家用車維持費
→ 返済可能額=手取り収入の30%という通説もありますが、
それは他の支出が一定以下の場合の話。ライフステージによっては20%未満でも危険です。
落とし穴③|「繰上返済前提」のシナリオに頼りすぎる
- 「ボーナス時にまとめて繰上返済すれば大丈夫」
- 「投資で増やして一括返済すればいい」
──こうした前提でシミュレーションしていませんか?
繰上返済はメリットもありますが、
- ボーナスカット
- 投資の損失
- 教育費・親の介護などによる資金流出
など、予定通りに実行できないケースは非常に多いのです。
3年後に後悔しない「リアルなローン設計」の思考法
✅ 1. 金利は“現在+1.5%”で想定する
たとえば0.5% → 2.0%まで上がったシミュレーションを必ず確認。
月々の返済額・総支払額・手元残資金すべてに影響が出るため、これを見ずに契約するのは危険です。
✅ 2. 月額返済より「生活防衛資金の残高」を優先
ローン契約後、手元に6ヶ月以上の生活資金(家賃分含む)を残すことを最優先に。
「返済はできるけど、急な出費に対応できない」というのが最も危険な状態です。
✅ 3. 3年後・5年後・10年後の家計キャッシュフローを可視化
以下をExcelや家計簿アプリで見える化しておきましょう:
- 教育費のピーク(中学・高校・大学)
- 車買い替えのタイミング
- 保険料の増加
- 家電の買い替え
- 老後資金の積立開始時期
→ これらを考慮しないローン返済計画は「現実逃避の数字遊び」にすぎません。
まとめ|ツールの数字より、自分の生活を信じよう
住宅ローンは「人生で最大の買い物」といわれます。
だからこそ、“月々の支払い額がクリアできるか”だけで判断するのは危険です。
- 金利は上がるかもしれない
- 家計支出は変化し続ける
- 想定外の出費は必ず起きる
これらすべてを前提にした“リアルな返済計画”こそが、
「買ったことを後悔しない住宅ローン」の鍵です。