はじめに|「早く返した方が得」は本当か?
住宅ローンを組んだ人の多くが一度は考えるのが「繰上返済」や「一括返済」。
「金利を減らせるから」「借金は早くゼロにしたい」
確かに正しいように見えますが、すべての人にとって“得”とは限らないのです。
この記事では、一括返済や繰上返済が思わぬ損失を生むケースや、やってはいけない返済パターンについて詳しく解説します。
そもそも繰上返済とは?
✔ 期間短縮型と返済額軽減型の2種類
- 期間短縮型:返済期間を短くし、総利息を減らす
- 返済額軽減型:期間は変えず、月々の返済額を減らす
どちらも利息負担を軽くする手段ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。
中でも“期間短縮型”が最も利息軽減効果が大きいため、選ばれることが多いです。
「早く返せば得」と思い込んでいる人の落とし穴
❌ 落とし穴1|住宅ローン控除が使えなくなる
住宅ローンには、一定期間、所得税が還付される控除制度があります。
もしローン残高がなくなれば、この控除対象から外れてしまいます。
つまり、繰上返済によって還付がゼロになり、「実質的に損をする」こともあるのです。
❌ 落とし穴2|貯蓄が枯渇し、リスクに弱くなる
一括返済により、手元資金が大きく減ると…
- 突然の医療費や教育費に対応できない
- 投資や副業など将来の収入増に使える資金がなくなる
- 収入減・失業時の安全弁がなくなる
ローンを減らすことに気を取られて、生活の柔軟性と“守りの資金”を失うのは本末転倒です。
❌ 落とし穴3|低金利時代に“安い借金”をわざわざ減らす不合理
現在の住宅ローンは、過去に例のない超低金利です。
仮に金利が1%前後で借りられている場合、
そのお金を返すよりも、手元資金を資産運用や教育投資に回した方がリターンが大きい可能性もあります。
「借金=悪」と決めつけず、コストパフォーマンスの視点で考えることが重要です。
こんな人は繰上返済しない方が得!
状況 | なぜ繰上返済しない方がいいか? |
---|---|
住宅ローン控除がまだ適用中 | 所得税・住民税の還付が得られるため |
子どもが小さく、今後教育費が増える | 将来の大出費に備えて現金を温存すべき |
金利が1%未満と非常に低い | 利息より他の資金活用の方が効率的 |
投資を学び、年3〜5%の運用ができる | ローン返済よりリターンが大きい可能性 |
定年後に団信で残債が消える予定 | 無理に早期完済するメリットが小さい |
「繰上返済=正解」になる人の条件とは?
もちろん、すべての繰上返済が損なわけではありません。
以下のような人は、積極的に繰上返済を検討する価値があります:
- ローン控除期間が終了している
- 毎月の家計に余裕がなく、利息負担が精神的ストレスになっている
- 手元資金が潤沢で、繰上返済しても流動性が確保できる
- 金利が高い(2%以上)のローンを組んでいる
- 安定収入がなく、早めに完済して安心したい
つまり、「精神的な安定」や「生活のキャッシュフロー改善」が主目的なら繰上返済は正解となるケースもあるのです。
正しい繰上返済の判断基準3ステップ ✅
ステップ1|ローン控除の残年数と還付額を確認
控除で得られる金額 > 繰上返済で減る利息
の場合は、急がない方が有利です。
ステップ2|手元資金が半年分以上あるか確認
医療・教育・失業など「想定外の支出」に備える現金を残す。
ステップ3|“返済の安心感”を数値化して比べる
心理的な満足感と、経済的な損得を冷静に比較しましょう。
まとめ|「早く返す」が必ずしも正解ではない
一括返済や繰上返済は、たしかに「借金ゼロ」になる爽快さがあります。
しかし、それが必ずしも経済的な得につながるとは限らないという点を忘れてはいけません。
- 控除を失って損する
- 資金が枯渇して不安定になる
- 投資機会を逃す
「早く返したい」ではなく、「返した方が得かどうか」を軸に、冷静に判断しましょう。