はじめに:「良いコード」とは、誰にとっての“良さ”なのか?
エラーが出ない。テストが通る。レビューで指摘されない。
エンジニアとしての「良い仕事」はこう定義されがちですが、
それは「技術的な正しさ」であって「ビジネス上の価値」ではありません。
- 開発チーム内では高評価でも、ビジネス部門からは無関心
- 美しくリファクタされたコードが、収益には結びついていない
- 技術的チャレンジは楽しいが、ユーザーには見えない
──あなたの書いたコードは、会社の利益に何をもたらしているのか?
それを考えることこそ、「ビジネスエンジニア」としての第一歩です。
1. 「動くコード」は前提、「貢献するコード」が本質
以下の比較を見てみましょう。
項目 | 技術者視点 | ビジネス視点 |
---|---|---|
パフォーマンス | ミリ秒単位の高速化 | ユーザー離脱防止に直結するか? |
リファクタリング | 美しい構造 | 保守性や開発スピードの改善がROIに影響するか? |
新技術導入 | 試してみたい | 競合優位性やコスト削減になるか? |
バグ修正 | 品質担保の義務 | 顧客体験の向上や損失防止か? |
✅ 「正しいコード」は書けても、「意味のあるコード」になっていない──
それが多くの中堅エンジニアの成長の壁です。
2. “コードが貢献しているか”を測る5つの視点
🔍 視点①:収益やKPIとの関連性があるか?
- この機能は、売上にどうつながるのか?
- ユーザーのLTVやコンバージョンに影響するのか?
- 改善によって数字に変化が出たか?
→「数字に効くコード」かどうかを意識することが第一歩。
🧠 視点②:ユーザーの課題を解決しているか?
- 仕様どおり作っても、ユーザーの本質的な問題を無視していないか?
- 本当に求められているのは、どんな機能か?
- 「本質的に役立っている」と自信を持って言えるか?
→ 顧客理解のないコードは、誰の役にも立たない。
🔧 視点③:保守性・拡張性が開発効率に影響しているか?
- この設計は、来月以降の開発を早くするか?
- バグ修正・追加機能に強い構造になっているか?
- 他のメンバーが「助かる」と思うコードか?
→ 技術的判断の影響は、“将来の速度”に表れます。
💸 視点④:工数・コストに見合う価値があるか?
- 3日かけて作ったものは、3日分の価値を生むか?
- リファクタや自動化は、どれだけの手間を削減したか?
- 検証・実装・運用まで含めた「ROI」があるか?
→ コードも“投資”です。コスパを意識せず書いたら、浪費になる。
🤝 視点⑤:他職種との連携をスムーズにしているか?
- プロダクトマネージャーが理解しやすい設計になっているか?
- デザイナーやQAが使いやすい仕組みにしているか?
- ドキュメントやAPIがチームに開かれているか?
→ “チームで仕事を進めやすくする”のも、立派なビジネス貢献です。
3. ビジネス貢献するエンジニアの習慣とは?
✅ 顧客やビジネスのゴールを常に把握している
- プロジェクトの背景・目的を理解した上で設計判断をする
- KPIやOKRの達成に向けて“技術の方向”を定めている
✅ “仕様を受け取る人”ではなく“価値を提案する人”になる
- 単に「仕様通りに実装」ではなく、「もっと効果的な手段」を考える
- UI/UX・データ設計・自動化など、自分から付加価値を設計できる
✅ 数字で話す癖がある
- 実装後の効果をデータで測定し、共有できる
- 開発のスピードや影響を定量的に振り返る
- 「成果報告」が“数字ベース”で語れる
4. 技術は“手段”であり、“目的”ではない
どれだけコードが綺麗でも、
どれだけフレームワークが最新でも、
それがユーザーや事業にとって意味がなければ、価値はない。
エンジニアは職人ではなく、
**「技術で価値を届けるビジネスパーソン」**です。
だからこそ──
「このコードは、誰のどんな問題をどう改善しているか?」
という問いを、常に頭の片隅に置いておきましょう。
まとめ:コードは“価値”と結びついて初めて力を持つ
✔ 「書いたか」ではなく「効いたか」を重視せよ
✔ 技術は目的ではなく、価値提供の手段
✔ ビジネスに貢献するエンジニアは、評価も自由度も高い
もし、あなたのコードが今すぐ「削除されても誰も困らない」なら、
今日から“価値につながる設計”に頭を切り替えるタイミングかもしれません。